第三章
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のも感じていた。
「それはいいんですよ」
「それはいい?」
「ええ。それはいいんですよ」
憮然とした顔で少しまくしたてるようにマネージャーに話すのだった。
「それは全然構いませんよ、本当に」
「じゃあ何でそんなに怒ってるの?」
「羽田さんのことですよ」
ここで彼は彼女の名前を出した。
「あの人のこと書いてあって」
「悪口が?」
「はい」
声は憤然としたものになっていた。
「そうなんですよ。昔のこととかもう」
そしてまだ言うのだった。
「滅茶苦茶に書いてあって。酷いですよね」
「まあね」
それはマネージャーも認めた。認めはした。
「けれどね。そうしたところだから」
「気にするなっていうんですね」
「剣ちゃんのこともかなり書かれてるじゃない」
彼自身のことに関して言ってみせたのだった。
「随分。書かれてるよね。見たら」
「僕のことはいいんです」
しかし彼はこう言うのだった。
「僕のことは別に」
「いいって!?」
「僕はそんなこと気にしませんから」
自分が何を書かれようが全く意に介していないというのである。これはある意味において非常に立派ではある。まだ二十歳になったばかりだというのに。
「それは全然」
「いいんだ」
「ええ。けれど」
それでもなのであった。
「あの人のことは。ちょっと」
「確かにね。あれだけのことがあった人だし」
このことは当然ながらこのマネージャーも知っていた。知ってはいるがあえて言いはしない、それだけである。気遣いではある。
「言わない約束だけれど心のない奴もいるから」
「そうですか」
「そんな奴は無視してね」
このことをまた彼に言うのだった。
「いいね。それは」
「はあ」
「馬鹿は何処にでもいるんだよ」
また話すのだった。念を押すようにして。
「それははっきり意識して、無視してね」
「わかりました」
「剣ちゃんは仕事に専念して」
ここまで話したうえで剣人自身に優しい声をかけるのだった。
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