聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第二幕
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失われた君の感情が、望んでいるモノをあげる』
アクトにはいくつかの感情がない。それと、他人の気持ちを知る《共感覚》がない。全て、両義太極の《太極》をつかさどる第二人格に持って行かれた。《両義》であるアクト自身には、悲しみも、喜びも、優しさも、楽しさも――――そして、愛情すらもない。
長い間、望む答えを出すはずもない我が身を慕ってくれている少女に、答えてやることすらできない。
失われた心を、取り戻そうとは思わない。もう、感情が足りない生活には、慣れた。
だが、あの青年が姿を現し、自らを誘った時――――
アクトは、失われたはずの感情がうずくのを感じた。そして、ほんの少しの『興味』も。
珍しくアクトは、自分の利益以外のことを考えて動いた。結果としてそれが利益になればそれでよし。その程度で動いた。感情がないがゆえに合理的であるアクトには、死ぬほど珍しい行動だった。
だが――――この世界にやってきてから早三十分。アクトは、《天宮》が示そうとしたものが何なのか、一向に手がかりをつかめないでいた。
もしかしたら、何の意味もないのではないか。
あの男に、謀られたのではないか。
――――考えても、仕方ない。
「俺らしくもない」
アクトはそう呟くと、再び手がかりを探して放浪を始める。
――――その時だった。物陰から、一つの人影が飛び出したのは。
「――――ッ!」
とっさに《デストラクション・シールド》を構えて攻撃を弾き返す。アクトの持つユニークスキル、《双盾》はこの世界でもきちんと発動するらしい。自分には一切のダメージが入らずに、代わりに相手にその分のダメージが弾き返される。
「うぉぉ!?」
「……何だ?」
《双盾》のエクストラ効果でダメージを受け、吹っ飛んで行ったのは一人の少年だった。SAO時代の、ギルド《血盟騎士団》でキリトが着ていた制服に似た、白地に青いラインの入ったコートを纏った、黒髪の少年だ。
「いてて……何だよ、その盾……全部跳ね返ってきやがった……《双盾》? うわ、ダメージ反射効果があるのか。うへー、先に《見て》おけばよかった……」
見れば、少年の眼が光っている。彼の視点はアクトではなく、どこか別の場所……そう、例えば、脳裏に閃いた文字を見ているようだった。
「誰だお前」
「あ、急にごめん。俺はジン。《天宮》とか言う奴の誘いで、クリスマスプレゼントを取りに来た。お前は?」
「クリスマスプレゼント……? ……アクトだ。《天宮》に半強制的に連れてこられた」
すると、へぇ、と、ジンと名乗った少年は呟いた。
「みんながみんな、クリスマスプレゼントを取りに来たわけじゃないのか……なぁ、俺と一緒に動かない
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