暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜神話と勇者と聖剣と〜
聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第二幕
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
失われた君の感情が、望んでいるモノをあげる』

 アクトにはいくつかの感情がない。それと、他人の気持ちを知る《共感覚》がない。全て、両義太極の《太極》をつかさどる第二人格に持って行かれた。《両義》であるアクト自身には、悲しみも、喜びも、優しさも、楽しさも――――そして、愛情すらもない。

 長い間、望む答えを出すはずもない我が身を慕ってくれている少女に、答えてやることすらできない。

 失われた心を、取り戻そうとは思わない。もう、感情が足りない生活には、慣れた。

 だが、あの青年が姿を現し、自らを誘った時――――

 アクトは、失われたはずの感情がうずくのを感じた。そして、ほんの少しの『興味』も。

 珍しくアクトは、自分の利益以外のことを考えて動いた。結果としてそれが利益になればそれでよし。その程度で動いた。感情がないがゆえに合理的であるアクトには、死ぬほど珍しい行動だった。

 だが――――この世界にやってきてから早三十分。アクトは、《天宮》が示そうとしたものが何なのか、一向に手がかりをつかめないでいた。

 もしかしたら、何の意味もないのではないか。

 あの男に、謀られたのではないか。

 ――――考えても、仕方ない。

「俺らしくもない」

 アクトはそう呟くと、再び手がかりを探して放浪を始める。


 ――――その時だった。物陰から、一つの人影が飛び出したのは。

「――――ッ!」

 とっさに《デストラクション・シールド》を構えて攻撃を弾き返す。アクトの持つユニークスキル、《双盾》はこの世界でもきちんと発動するらしい。自分には一切のダメージが入らずに、代わりに相手にその分のダメージが弾き返される。

「うぉぉ!?」
「……何だ?」

 《双盾》のエクストラ効果でダメージを受け、吹っ飛んで行ったのは一人の少年だった。SAO時代の、ギルド《血盟騎士団》でキリトが着ていた制服に似た、白地に青いラインの入ったコートを纏った、黒髪の少年だ。

「いてて……何だよ、その盾……全部跳ね返ってきやがった……《双盾》? うわ、ダメージ反射効果があるのか。うへー、先に《見て》おけばよかった……」

 見れば、少年の眼が光っている。彼の視点はアクトではなく、どこか別の場所……そう、例えば、脳裏に閃いた文字を見ているようだった。

「誰だお前」
「あ、急にごめん。俺はジン。《天宮》とか言う奴の誘いで、クリスマスプレゼントを取りに来た。お前は?」
「クリスマスプレゼント……? ……アクトだ。《天宮》に半強制的に連れてこられた」

 すると、へぇ、と、ジンと名乗った少年は呟いた。

「みんながみんな、クリスマスプレゼントを取りに来たわけじゃないのか……なぁ、俺と一緒に動かない
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ