第二章
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第二章
「それで知ってるなんて」
「優しいかな?」
「優しいですよ」
だが剣人はあくまで言うのだった。
「僕いつも一緒にいるからわかるんですよ」
「そういえばいつも一緒にいるけれどね」
「それはね」
「やっぱり。同じ主演だし」
圭にとってはこれはいつもであったが剣人にとってははじめてだった。だからこそ彼は今そちらもかなり頑張っているのである。
「けれど。どうしてそんなのわかるの?」
「そうだよ。奇麗なのはともかく優しいって」
「伝わるんですよ」
彼は箸で飯を口の中に入れ込みながら皆に答えた。口は見ただけでは小さいがそれとは裏腹にかなりの量が入る不思議な口だった。
「いつも側にいて一緒に撮影してると」
「伝わるって?」
「手が触れたりするから」
彼は言った。
「そこから。何となく」
「おいおい、こっちもドラマになってる?」
「まさか」
皆彼の言葉を聞いて思わず苦笑いを浮かべて言ったのだった。
「これコメディーだからそうなったらそれこそその場で皆囃し立てる世界だけれど」
「それはないね」
今のドラマはそんなドラマなので。とことんまでやるコメディーなのである。
「しかしそれでわかるかな?」
「野上君って感性鋭いけれどね」
彼のこうしたところも次第に有名になってきていた。
「それでも。まさかね」
「そこまでわかるものかな」
「わかります」
本人はあくまでこう言うのだった。
「あの人は絶対にいい人ですよ。優しいですしね」
「まあ昔はね」
ここでスタッフの一人が彼に言ってきた。
「気さくでね。いい娘だったんだよ」
「やっぱり。そうですよね」
「昔はね」
だが彼はそれを限定してしまうのだった。
「そうだったんだよ」
「昔は。ですか」
「わかってると思うから言わないけれど」
このスタッフはここで腕を組んでそのうえで述べた。周りの面々もそれを見て目で納得して頷くのだった。そう、剣人以外はであった。
「そうだったんだ」
「今でもそうですよ」
剣人のこの言葉は少し聞いただけでは空気を読んでいないものだった。
「あの人は今でも優しいですよ。気さくで」
「まあそう思うならいいけれど」
そのスタッフはこれ以上は彼にも周りにも彼女のことは言いたくないようだった。そして実際に言おうとはしなかった。口を閉ざしだしていた。
「まあそれでもね。あの娘にはあまり構ってあげないでね」
「構うなって。いじめじゃないんですから」
「いじめじゃないから、これは」
スタッフはそれは否定した。
「気遣いなんだよ。わかったね」
「気遣いですか」
「いじめっていうとね。あの娘は随分いじめられたよ」
スタッフはまた腕を組んだ。顔は次第に悲しいものを思い出すものになって
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