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101番目の舶ィ語
第四話。甘い誘惑……
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?』

駆け出した俺の足音とは別に……

コツ……コツ……

と、靴がアスファルトを踏んで歩くような音がすぐ背後から聞こえてきた。

なんだなんだ、これは?
こんな事がありえるのか。一歩の歩幅が長すぎる。
絶対にありえない歩き方だ。
走っているのに、歩いて追いつくってどんな歩き方だ??
内心でツッコミを入れながらどうしたものかと、考えながら走り続けた。

『______逃げても無駄よ』

「無駄、か……それはどうかな」

確かに状況は悪すぎる。
誰も、自分と彼女以外、人っ子一人いない空間。
会話できるのは追いかけて来る彼女のみ。
それも会話の内容は殺害予告。
どこまで逃げても鳴り止まない電話。
どこまで逃げても追いかけて来る足音。
普通の人なら精神的に耐えられない状況だろう。

けど俺は、ここで素直に諦めるなんて事はできない。
前世、前いた世界で俺は諦める事を禁止された。
俺のただ一人のパートナー、アリアによって。

「無理、疲れた、面倒くさい。この言葉は、人間の持つ無限の可能性を自ら押し留めるよくない言葉だ」


それに元武偵として守らないといけない教えもある。
武偵憲章第10条。
『武偵は決して諦めるな』

「君が言うように本当に無駄なのか。
この俺が試してあげるよ」

『そう、なら試してみればいいわ』

低い、地獄の底から響くような暗い声が聞こえた直後、電話がぷつっ、と切れた。

電話が切れた直後、俺は逃走経路を、どこに向かうか思案し始めた。
学校は、彼女が、電話の主がいる、と言った以上向かえない。
このまま住宅街か大通り、もしくは商店街辺りまで走れば、少なくとも車の一台は通るはずだ。
そうしたら前に出て止めて強引に乗るなり、ヒッチハイクするなりして乗せてもらえばいい。
乗せてもらえれば脱出できるはずだ。
それか、その辺にある車を自分で動かすか。
普段の俺ならともかく、ヒステリアモードの今なら車の運転くらいどうにでもなる。
いくら彼女でも車より速く歩けるわけないだろう。

そうと決まれば______

俺は道端に停めてあった乗用車、運がいい事にキーが差しっぱなしになっていた車に乗り込み、後ろを見ないように気をつけつつ、エンジンをかけて発進させた。
前世の友人、武藤の運転を思い出しながらアクセルを吹かして加速させていく。
ぐんぐん速度が上がっていき、誰もいない町中を俺が運転する車のみが走行していく。
信号機は変わらずに機能しているが、対向車一台すれ違わないなんてどういうわけだ?
車に乗ってからあの足音は聞こえて来ない。

「ふぅ。助かった……」

強がってはいたが、ヒステリアモードとはいえ、未知の超常現象を相手にするにはかなり疲れ
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