―邪心経典―
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「明日香ぁぁぁっ!」
先を行く《スピード・ウォリアー》に守られながらも、《樹海の爆弾》の爆心地へと走るものの、既に聖女ジャンヌ――いや、明日香の運命は既に決定している。この世界でのデュエルの敗者に待ち受ける運命から、逃れる術など存在しない。
「明日、香……」
《樹海の爆弾》の噴煙が風で消えていくが、そこにはもう誰もいない。爆発が強くてどこかに吹き飛ばされた――などという考えが頭をよぎるが、それはただの現実逃避に過ぎないということは分かっていた。もういくら名前を呼んでも探しても、天上院明日香はこの世界には存在しないのだ。
……そう、俺がこの手で明日香に引導を渡したのだから。
「あ、あ……」
「おめでとう、遊矢くん! 君の勝利だ!」
その結論に至り愕然とする俺に対し、場違いな拍手が響き渡る。その主は言うまでもなく、この戦いを観戦していた《闇魔界の覇王》その人である。デュエル中にいつの間にか姿が見えなくなっていたが、どうやら安全地帯まで避難していたようで、拍手をしながら呑気に俺の下へ歩いてくる。
「約束した通り、我々はこの世界から手を引こう! 君の勝利だ」
約束とは何の話だったか……などと一瞬考えると、そう言えば戦士長と聖女ジャンヌ――明日香を倒せば、闇魔界の軍勢はこの世界からは手を引く、という話しだったか。闇魔界の覇王が響かせる拍手の音を聞きながら、俺は一つの思考に囚われていた。
――そんなことはさせるものか、と。
「……《スピード・ウォリアー》!」
俺の叫び声とともに、未だ消えていなかった《スピード・ウォリアー》が闇魔界の覇王に突撃していき、回し蹴りで攻撃していく。その攻撃は間一髪で避けられてしまうが、耳障りな拍手の音が止んだのは良しとする。……そうだ、この世界から逃すなどさせてはいけない。
「明日香の……仇だ……!」
「それはおかしなことを言うね、私は何の手も出していないというのに」
《闇魔界の覇王》はそんなことを言ってのけるものの、俺にその言葉は意味を成していなかった。……明日香をこの手で殺したことを誰かのせいにしないと、気が狂ってしまいそうで。明日香が死んだのは俺のせいじゃない、アイツのせいなんだ――と、まるで子供の癇癪のようだ。
「デュエルだ……覇王!」
デュエルディスクを再展開すると、闇魔界の覇王に攻撃していたスピード・ウォリアーが消えていく。その様子を見た闇魔界の覇王も、自身の腕についている禍々しいデュエルディスクを展開し、デュエルの準備が完了する。
「……悲しみ、苦しみ、怒り、憎しみ、疑心……やはり君こそが邪心経典の完成に相応しい……良いだろう、デュエルだ!」
俺には分からない何事か呟きながら、俺と覇王は睨み合う。誰もいないスタジ
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