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メモリーブレンド
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存は無かった。
 その店で学はどれだけ待ったであろうか。昼に来たのだが昼と呼ぶにはもう陽が傾き過ぎている。
 海が青から橙になろうとしている。白銀の波がその間で輝く。
 それを見ながら学は今までの事を思い出していた。香織との思い出である。
 初めて会ったのは講義で隣同士になった時だった。学校の事もお互い何も解からず話を交換するだけだった。
 次の講義でも会った。また隣同士の席だった。その日はそれから講義も無かったので二人で学校やサークルの事を色々と話し合った。
 そういう事が暫く続き二人は自然につき合うようになった。こういうふうに自然にカップルになるという話はよく聞いていたが自分がまさかそういうふうになるとは思っていなかった。
 二人はそれぞれの下宿でよく話をした。講義がどうとか音楽や小説、漫画がどうとかごく普通のありふれた今時の学生の話である。そうして話をしたり皆を交えて一緒に遊ぶのが学はとても楽しかった。今まで男ばかりで騒いだり遊んだりばかりしていたのでそうしたのりが新鮮に思えたのだ。
 海にも行ったし飲みにも行った。特に予定が無い時はいつも二人で遊びおしゃべりをした。学はそれまで特定の女の子との付き合いが無かった。それは香織も一緒だった。だから最初は二人共ぎこちなかったが次第に慣れて楽しむようになった。そこに甘えが出来ていたかというとそうかも知れない。
 だから心が浮わついた。その時は特に悪い事だとは思わなかった。浮気は男なら当然の行為だと考えていた。今思うとそれが甘えだったのだ。
 女性に、交際相手に対して甘えがある。だから浮気をする。例えばれてしまっても許してくれる。そういう考えが根底にあるから浮気をするのだ。
 思えば父もそうなのだろう。母に甘えているから浮気をするのだ。そして後ろめたいから隠れて、ばれないようにする。ひょっとしたら母はそれを知っているのかもしれない。若しそうだとすれば知っていてあえて知らないふりをしているのであろう。父はとんだ道化になる。
 今まで浮気は格好良いものだと考えていた。だがそれは大きな間違いだった。それは裏切りであり醜い行為であったのだ。
 「気付くのが遅かったな」
 学はぽつりと呟いた。もう思っても仕方が無いのは解かっていた。しかし思わずにはいられなかった。
 ふと向かいのカップを見る。既に冷めてしまっている。
 二人で来た時香織はいつもミルクティーを頼んでいた。アイスかホットかはその時の彼女の気分次第であった。そして学も彼女と同じティーを頼むのが常だった。
 不意に学はもう一杯飲みたくなった。店の人にミルクティーを頼む。ホットだ。
 ティーがきた。紅のルビーを溶かしたような茶がほのかな香りを辺りに漂わせている。
 そこに白いミルクを入れる
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