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メモリーブレンド
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して肩に担いでいる娘は遂に止めの言葉を言ってしまった。
 「ホテル?いいよ」
 と。これで決まりだった。香織は無言で電話を切った。女の子を肩に担いだまま学はしばし呆然と立ち竦んだ。
 その日はその娘を終電に乗せた。幸い終電には間に合ったし彼女の下宿も自分が降りる駅のすぐ隣だった。その娘を下宿に送ると学はタクシーで下宿へ帰った。
 次の日の朝学は香織と会った。彼女は会った途端ににぷい、と顔を横に向けた。言葉のかけようが無かった。
 暫くの間何とかあの時の状況を説明しようとしたが取り合ってはくれなかった。学校で話し掛けても電話や携帯でメールを入れても無駄だった。何しろ心が浮ついたのは事実なのだ。これは弁明の仕様が無い。
 どうしようかと考えた。別れたくはなかった。離れられればそれだけ離れたくなかった。恋愛とは遠くなって初めてその大切さが解かる、高校の時気の利いた先生が授業で言った言葉だ。その時は一笑に付したが今その言葉の持つ意味を噛みしめていた。
 そして学が思いついたのは手紙を送る事だった。香織の下宿に手紙を送る、そして喫茶店で待ち合わせて謝る、そして許してもらう、これしかもう思いつかなかった。自分の浮気心を弁明するつもりはもう無かった。ただ謝って許してもらおうと思った。
 喫茶店は以前二人でよく行った店を選んだ。あえてその店にした。何故か、答えは簡単であった。香織がお気に入りの店だからだ。
 香織は海が好きだ。泳ぐのが好きなのではない。勿論泳ぐのも嫌いではない。それよりも海辺を歩いて波の音を聞いたり砂の上を歩いたり、青い海を見たりするのが好きなのだ。
 特に青い海を見るのが好きだった。どこまでも続く青い海、水平線で雲や空と結ばれている。特に夏や秋の海を見るのが好きだった。
 香織に言わせると夏の海はその青さがいいらしい。実際彼女は青が好きだった。秋の海は高く澄んだ空の下で青さをたたえてるのがいいらしい。朝日や夕陽を映し出しているのは最高と言う。
 海に映し出される朝日や夕陽は学も好きだった。毎年夏になると海の近くに住んでいる親戚の家へ遊びに行ったがその時見た海に沈む夕陽が今でも胸に焼き付いている。
 この喫茶店に入ったのはたまたまだった。デートした帰り喉が渇いたので入ったのだ。
 入ってまず香織が目を見張った。店の窓一面に夕陽に照らされ銀と橙に光る海があったのだ。
 香織は迷わず窓側の席を選んだ。そして店の人がメニューを聞きに来てもほとんどうわの空で海を眺めていた。
 とりあえず学がメニューを注文した。当たり障りの無いアイスティーを二つ注文した。
 それからその辺りを通る度に香織はその店へ入った。その海辺でデートをする事も多くなった。その店は味もサービスも
申し分無かったので学としても異
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