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メモリーブレンド
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し得意である。人を笑わせるのは得意である。
 だから女の子に誘われる事も多かった。学さえそのつもりならそういった機会は幾らでもあった。ただその機会を見送っていただけである。
 それは何故か。別に香織への義理というわけではない。浮気はばれなければ良いという考えだった。学の父は母の目を盗んでこっそりと浮気をしていた。小さい頃母親から用事を言われ父の勤める総合病院に行った時である。若くて綺麗な看護婦に親しげに声をかける父がいた。学には気付かなかった。
 たまたまタイミングが良かった。学が父の元に着いた時その看護婦は別の場所へ行っていた。父は何事も無かったかの様に学が母から言いつかっていた用事を受けた。この時は普通に話していたと思った。
 時々であるが父は帰りが遅い。酒の他に女遊びもしている様だ。母親にはばれないようにしている。母は潔癖症でその様な事を許す筈が無いからだ。もしばれたら修羅場になるだろう。
 だがこの父親は賢明であり家に女の残り香を持ち込んだりはしない。学も叔父に言われるまで気が付かなかった。あいつは女好きだ、と。実の弟の悪い癖をその叔父は苦笑しながら学に話した。
 そういう父親を持っているせいであろう。学も香織に見つかりさえしなければ良い、と思っていた。事実機会があればそうしたいと思っていた。そしてその時が来たのだ。
 夜の繁華街を出た。そして歩道を越えた向こう側へ進む。そこはホテル街だ。様々な色の看板が立ち並び恋人同士が歩いている。学も香織と一緒に何回か来たことがある。
 その中でも最も気に入っているホテルの前に来た。洋風の内装がいいホテルだ。中に入ろうとした。
 だがその時だった。学は携帯の電源を切っていなかった。これが彼のミスだった。
 電話の主は香織だった。一足早く自分の下宿に帰った彼女はシャワーを浴びて酔いを醒まし学へ電話をかけたのだ。普段こんな時間に電話をかけたりはしない。一体何故・・・。今にして思えばこれこそが女の持つ第六感というものだったのだろうか。
 学は一気に酔いが醒めた。必死に取り繕うとする。今日は友達の家に泊まると言った。だがそれも彼のミスだった。
 その友人は誰か、香織は聞いてきた。医学部の者を出そうにもすぐに嘘だとばれてしまう。文学部、といっても適当に名前を出しても駄目だ。とりあえずこういう時に名前をだしてもいい友人といえばサークル仲間だ。ホッケー仲間で遊び人の奴がいた。こいつには自分の名前を度々使わせている。こいつなら構わないだろう。そう思って名前を出そうとした時だった。
 肩に担いでいた女の子が不意に喋りだした。とりとめの無い、酔っ払い特有のろれつの回らない口調だった。だがそれで充分だった。
 学は額から汗を流した。必死に何か言葉を探す。だが言葉が思いつかない。そ
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