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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
23:"アレ"
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て、俺はなにをガン見しているんだっ。 ここは一旦戻って……――っ!?」

 つい言葉を口にしてしまい、その途中で俺は慌てて口に手を当て声を潜めた。
 さっきの言葉の声の大きさは、十数メートル先のユミルには聞こえないはずの声量だったはずだ。だが、ユミルは俺が口を開いてしまった瞬間、ソプラノのソロコーラスを中断し、首をこちらに(ひね)りってじっと目を凝らしていた。気のせいだと思ってくれればいいのだが……

「……誰っ!?」

 静謐な森の空気に響き渡る、このユミルの張り詰めた叫びを聞いては間違いようが無い。川の中のままウィンドウを手早く操作し、以前まで着用していたボロチュニックを身に纏った彼は、確かに茂み越しの俺の存在に感づいている。さらに……

 ――ヒュカッ!!

「……っ!?」

 と、俺の耳から横数センチの位置へ一本の投擲ナイフが茂みを突き破りながら飛び込んできて、すぐ後ろにあった木に突き刺さった。

「次は当てるよ! 誰だか知らないけど、コソコソしてないで堂々と出てきたらどうなの、覗き魔さん!」

「…………だよな」

 俺は溜息をつきながら呟き、背後のナイフを引き抜き、両手を上げながら茂みから進み出た。
 するとユミルはポカンと口を開けて、驚きながらも呆れた顔をして俺を迎えた。

「…………キ、キリト? てっきり、あの求婚してきたヘンタイか、デイドのヤツかと思ってたのに……」

「……悪い。咄嗟の出来事だったんだ。だから、お前の思ってるような理由でそこに隠れてたわけじゃないんだ。信じてくれないか?」

 俺はナイフをユミルへと放って渡す。ユミルは驚いたままながらも口を閉じながら、それを器用に受け取った。

「どっ……どんな理由で隠れてたって言うんだよ……なにが、信じてくれないか、だよっ……こ、このっ……」

 ユミルは顔を伏せてナイフを握った手でプルプルと震わせていたが……やがて深い溜息と共にそれを止め、濡れた髪以上にじとっとした目で俺を見上げた。
 そして、


「この…………ヘンタイ」


 そう俺に宣告したのだった。

 ……これは釈明に時間が掛かりそうだ。

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