トワノクウ
第十九夜 夢と知りせば覚めざらましを(二)
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ます。露草さんのこと」
朝が来た。
くうは布団から起き出して夜着からドレスに着替えた。最後に被った帽子には、ゆうべ猫妖精がくれた大輪の青いバラ。
(ゆうべ掴んだ感覚は消えてない)
手の平の青い刻印が解放されたことで掴んだ感覚≠フ端。くうはそれを一晩かけて手繰り寄せ、己の中で確かなものに変える作業をずっと行っていた。身体を布団に横たえてはいても、精神は極限まで張り詰めていたのだ。
着替えたくうは露草の部屋に向かった。
朝陽が射し込む部屋の中は無人。梵天と空五倍子はまだ訪れていない。
くうは露草の眠る床まで歩み寄り、横に腰を下ろした。
「大丈夫です。くうが、なんとかします」
父を真似た、己を勇気づける呪文を唱えた。
戸が開いた。入ってきたのは梵天と空五倍子。どちらも(空五倍子は仮面を着けているが)張り詰めた表情をしている。
「おはようございます」
「うむ。今日、露草を目覚めさせると聞いたが、できるのであるか?」
「最大限やってみるつもりです」
昨日の翼の出現で感覚は掴んでいるし、徹夜だからドーパミン大量分泌中だ。できない気はしない。
「始めて、よろしいですか」
梵天に意向を伺う。
「ああ」
たった二音、されどひどく神妙だった。
くうは背中に集中する。ばさ。大きな純白の翼が現れる。
「露草、さん――露草さん」
くうはそっと、眠る露草の手を両手で包み込む。体温が途切れるぎりぎりまで落ちた冷たさだ、この手は。
「起きてください。もう、目覚めの朝です」
翼から背中に、背中から心臓に、心臓から両手に、鳳の力が伝わってくる。それをくうは露草に注ぎ込む。
(上手く行って)
ぴく。露草の瞼がかすかに震える。
くうは固唾を飲んで次の動きを待った。
まぶたが、じわじわと開いていった。現れたのは花色の虹彩。まだ焦点は結ばれておらず、くうを映していないと分かる。
(上手く――行った!!)
こみ上げる歓喜。できた。鳳の力をコントロールしきった。篠ノ女空が役に立てた!
しかし迷う。ここで声をかけて露草の意識をはっきりさせても、くうが何者であるかを説明して、起き抜けの露草に分かってもらえるか。
そんなくうの逡巡を見透かしたのか、はたまた単に気が逸ったのか。梵天が身を乗り出して露草の顔を覗き込んだ。
「俺が分かるか、露草」
「……、ぼん、て、ん……?」
掠れた声が名をようよう紡ぐ。それを聞いた梵天の顔がくしゃりと歪んだのは、きっとくうしか知らない。
(これ以上は私がいていい時間じゃない)
くうは梵天と空五倍子に露草の傍らを譲り、音も
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