九校戦編〈上〉
FLTのCAD開発センター×飛行術式テスト
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部長が慌てた顔をしながらこちらを見た時は面白いリアクションだった。その天井から通信ケーブルが吊り下げられて、テスターが着込むベストに繋がれた。その手伝いをしている蒼太達であったけど、俺らの護衛者に指示を出したからだ。あのケーブルが命綱に兼ねているからだ。
浮遊の術式は既知のものであり、このテストラボでも測定を経験済みだが、飛行術式は空中に浮かぶというところまでは同じでも背後にある仕組みは全く違う。ジャンプや落下減速とも異なる未知なる魔法である。テスターの顔からは緊張をしているが、蒼太達が声をかけていたので大丈夫だろうな。新種の魔法には、それがよく知られた魔法バリエーションに過ぎないものであってもどんなリスクがあるかは分からない。魔法式の小さなバグが、魔法師を死に至らしめてしまう事もあるからだ。それが全く新しいスキームを用いた世界初の魔法となれば、どれほど用心しても用心過ぎてしまう場合がある。なので護衛者である蒼太達を行かせた。そして準備が終わったので、蒼太達はこちらまで戻ってきたが、本部長がこっちに来た時の会話はある。
「遅れて申し訳ないが、牛山主任!織斑会長!」
「遅いわよ!あなた一真さんを出迎えもせずに何をしていたの!」
「こ、これは深夜様と真夜様!申し訳ありません、こちらに会長が来るのは知っていましたが『もういい、久しぶりだな。司波龍郎』お久しぶりです、織斑会長」
「さてと、これからお見せするのは現代魔法の歴史を変える時が来ましたから。ぜひ開発本部長も見て行ってほしいですな」
という会話があったが、本部長の隣に牛山がいて、その隣に俺達がいる。床面が緩衝素材に切替られ、吊り下げテストを行って、ようやく実験準備完了となった。
「実験開始」
牛山の合図で観測員の安全とテスターの安全両方ある、合図と共にテスト開始された。上から見ているのでヘルメットで顔が見えないが、二十代にして既にベテランと言えるだけのキャリアを持つファースト・テスターが、緊張をした面持ちである事が感じられる。いくらベテランだとしても、この未知なる魔法には緊張してしまうのが当たり前でもある。そしてデバイスのスイッチを入れる動作に躊躇はなかった。
「離床を確認」
「反動による床面設地圧の上昇、観測されませんでした」
視認するよりも早く計測機器の前から報告が飛び交う。
「上昇加速度の誤差は許容範囲内」
「CADの動作は安定しています」
ゆっくりとテスターの身体が上昇するが、それははっきりとテスターの足が床から離れていく。弛んだケーブルが、吊り上げによるものではないと物語っている。観測機器の音と計測結果を報告する声以外、観測室には衣擦れの音すらなかったが全員が動く事を忘れて目の前の光景を計測器の示す数値を凝視していた
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