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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第104話 帰り来る
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斬り伏せて仕舞うであろう、と言うレベル。

 微かな。本当に微かな空気が焦げるような臭いが鼻腔を擽り、俺の中を沸き立つような何かが走る。

 その刹那! 
 抜く手も見せず、更に、風すら斬らぬ斬撃が俺の元より発生。窓の傍らに立つはずの少女が、何故か天井辺りから発生させた剣圧をハルヒの頭上五十センチの位置で迎撃。そして、次の瞬間には双方とも霧散して仕舞う。
 後に残るのは見えない太刀同士がぶつかり合った瞬間に発せられた精霊の輝きのみ。
 いや、現実には二人ともその場を一歩足りとも動く事なく、ただ殺気を見えない剣へと変えて争って居るに過ぎない状況。

 人工の光に照らし出された室内。無数の精霊の乱舞。その差して広いとは言えない文芸部々室内で見えない刃が交わされる際に発する、微かな精霊の発光。玉響(たまゆら)、オーブなどと呼ばれている現象のみが、ここで行われている戦闘の微かな証と言えるかも知れない。

 成るほどね。どうにも、平和な日常に身を置く事は許して貰えないらしい。
 そう考えながら、僅かに口元にのみ浮かべる類の皮肉に染まった笑みを浮かべる俺。
 身体は弛緩した状態を維持。体重は背もたれに預けながら、肺を絞って丹田に呼吸を落とし、雰囲気は表面上柔らかな雰囲気を維持しながらも、内面では練り上げた気を全身へと漲らせ、急速に戦闘状態に持って行く。

 彼女……相馬さつきとの声を用いない会話を続ける為に。
 今現在の俺と、これまで数度、この世界に訪れ、さつきとの絆を結んだ俺の異世界同位体との違いを疑って居る彼女の疑念を晴らす為に。

 尚、件の有希は昨日と同じように俺の右側で我関せずの姿勢。普段通りの無表情……いや、それは最早、澄み切った湖面の如き無機質さ、と表現すべきか。その妙に作り物めいた容貌で和漢により綴られた書物へと視線を上下させる。そうして、その他の連中もまた昨日とほぼ同じ位置。例えば、神代万結は左側のパイプ椅子に腰を下ろした状態で正面……冬の弱い陽光が差し込んで来ている窓をただ一途に。しかし、まったく熱の籠らない瞳で見つめている。
 そして、朝比奈さんはメイド服に着替え、独楽鼠(こまねずみ)のように働いている。おそらく、この模擬試験が終わった後に、それぞれにお茶を配ってくれる心算なのでしょう。
 昨日との唯一の違いは、昨日は相馬さつきが陣取って居た俺の正面の位置にハルヒが陣取って居る事ぐらいですか。

 ただ……。

「だから何度も、俺は英語と数学以外はぶっつけ本番でも八十点以下を取る訳がないから大丈夫や、と言う取るやろうが」

 かなり不満一杯の雰囲気を撒き散らせながら、そう俺が答える。
 それに、そもそも、自分の子分だと言い切る相手の話を、ここまで信用しない親分と言う段階で問題が有ると思うので
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