第6章 流されて異界
第104話 帰り来る
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て居る訳ではありません。しかし、それはここに居る一般人。ハルヒや朝比奈さん達に気取らせない為の処置。彼女の内部を駆け巡る人の領分を越えた莫大な気を俺には感じる事が出来たのですから。
「あんた、本当に英語と数学以外は全部得意なんだ」
有希……。俺の異世界同位体が彼女と交わした約束を思い出した事により、以後、彼女を呼ぶ時は名前を呼ぶ事に成って以降、初めての放課後。俺の見ている目の前で答案用紙――。有希が用意した、ほぼ期末試験と同じ内容の模擬試験の答案用紙に赤い丸が次々と付けられて行く。
人知れぬ戦いが繰り広げられるその中心。長テーブルを挟んだ向こう側から、かなり間の抜けた声。俺が解いた答案用紙に赤ペンで丸を付けながら、本当に呆れた者の口調でハルヒがそう言ったのだ。
勝気な……かなり気が強いと思われる瞳に引き結ばれたくちびる。少し仕様としては古いデザイン。昭和の香り漂うセーラー服に包まれたのは、少女から大人へと至る途上の未成熟な肢体。十八女と書いて『さかり』と読むのだが、もしそうだとすると、彼女の美しさは咲き誇る前の蕾状態だと言うべきなのだろうか。
しかし、彼女はそんな表面的な美醜を越えた何かが存在するのも確かで有った。
凛として人を……いや、人以外の何かさえも惹きつけるその資質。人間として、女性として本当にそんな物が必要なのか疑問符を抱かずには居られない、類まれなる存在感と言う物を、現在の涼宮ハルヒと言う名前の少女が持って居るのは確実でしょう。
ただ……。
ただ、問題を用意してくれた有希ではなく、基本的に何もしていないハルヒが何故かエラそうに採点をしている点が解せないと言えば、解せないのですが。更にもうひとつ。呆れた者の口調の中に、何故か少し不満げな色が隠されているような気もするのですが……。
そう考えた直後、しかし、軽く首を横に振って直前の俺の考えをあっさり否定。
何故ならば、この部室へと俺を無理矢理に連れて来たのはハルヒですし、更に強引に模擬試験を受けさせたのもハルヒですから、採点しているのも理に適って居ると言えば、そうなのかも知れませんが。
但し、その彼女が発して居る不満が、何処に向かって放たれている不満なのかが、少し判断に迷うトコロですか……。
刹那、そのハルヒの頭上で見えぬ刃が閃き、響かないはずの剣撃の音が空気を揺らす。
まるで無造作に放たれたかのような、それ自体は見えない刃が大気を斬り裂き彼女の頭上へと振り下ろされる。その勢い、そして、その中に籠められた神威は人の域に留まるとは到底思えない。
彼女の放つ一刀からは、今現在の彼女の実力を如実に物語って居る。それは、そう。武術と言う領域における熟練の程は俺と大きな差はない。少なくとも、表の世界の達人程度ならば、五手も使う事もなく
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