暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第104話 帰り来る
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そう考え、途切れた会話を再開させる俺。
 彼女からの答えはない。但し拒絶はしていない。それは、呼び掛けた際に彼女から発せられた雰囲気が物語っている。

【ただいま、有希】

 昨日までの俺は、この世界に呼ばれた、……と考えていた。
 しかし、今では違う。俺は帰って来た。そう感じるように成って居た。

 僅かな空白。それは彼女が軽く呼吸を整える時間。
 そして、ゆっくりと。まるで一音一音に想いを乗せるかのような雰囲気で、

【おかえりなさい】

 彼女はそう伝えて来たのでした。


☆★☆★☆


 天井部より振り下ろされる殺気の刃を、こちらも同じく気を刃の形に変え弾き上げた。
 その瞬間、二人の見えない刃の周囲で活性化した小さき精霊たちがぶつかり合い、一瞬、勘の良い人間にならば気付かれたとしても不思議ではない強い輝きを放つ。

「呆れた」

 午前中だけで一日目の試験は終わり、自然と……ではないな。完全に拉致されるような形でとある少女に連れて来られた文芸部々室。
 しかし、普通に考えると……と言うか、俺が元々通って居た高校では文芸部員と言うのは図書室に入りびたりで、部室が何処にあるのかすら知らなかったのですが……。ここ、北高校の文芸部はその図書室からはるか離れた部室棟に部室がある状態。
 確かに、本棚にはそれなりの冊数の本があるのですが……。

 ここって、本当に文芸部の部室なのか、甚だ疑問。そもそも、文芸部に部室って必要なのでしょうかねぇ。特に、ハルヒが関わって居る以上、テキトーな空き部屋を勝手に自分たちの部室として占拠した可能性も有りますから……。

 そんな、現状にはそぐわない感想が心の片隅に浮かぶ俺。それは、そう一瞬の心の隙。確かに、期末試験一日目。特に、苦手教科の英語と数学がひとつずつ有った日を大過なく。むしろ、生涯に何度もない好調さで乗り切った現状では、少しぐらい心が緩んで居たとしても不思議でも何でもない。
 ……のですが……。
 そんな隙を()()が見逃してくれる訳もなく――

 再び切り結ばれる殺気。但し、双方とも表面上は普段の雰囲気のまま。
 そう。俺の方は正に昼行燈(ひるあんどん)。パイプ椅子の背もたれに体重を預け、腕と脚を組む姿勢。かなり弛緩した、良く言えば鷹揚とした。悪く言えばぼんやりとして、何も考えていないような雰囲気。
 片や彼女の方は、初めて俺がこの部室を訪れた時と同じ立ち位置。窓から冬晴れの世界にその鋭い視線を送りながら、此方……俺の方を見ようとはして来ない。
 いや、おそらく今の彼女は誰の顔も見つめる事は出来ないでしょう。俺の想像が正しければ、今の彼女は神懸かり状態。確かに、現状の彼女自身の周囲を、霊力の高まりに応じた小さき精霊たちが覆っ
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