暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第104話 帰り来る
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し。
 おそらく彼女としても、ハルヒが俺に対して強く干渉して来ると言うのは想定外だったと言う事なのでしょう。確かにただの友人に対する干渉としては過分なような気もしますが、彼女……涼宮ハルヒと言う名の少女に関してもかなり友人と呼べる人間が少ない事が予想出来ますから、数少ない友人に対しては過度に干渉して来たとしても不思議では有りません。
 それに長門さんの言うように俺の記憶力が良いのは事実。ただ、完全記憶能力者と言うタイプの記憶力……その瞬間を写真の如き精確さで記憶するタイプの、完全な特殊能力者と言うほどの記憶力ではなく、ごく一般的に存在する記憶力が良いと言われるレベルの人間。

 そんな人間なら、直前に受けた……何回も同じ問題を解かせたのならば、問題自体を丸暗記して居たとしても不思議では有りません。
 ……それが、飛霊を何体も召喚させられ、試験勉強をやらされた理由でしたか。

 俺の答えに成らない思考。しかし、無理に思考をブロックしている訳ではないので、今考えて居る事は、そのまま言葉に近い形で長門さんには伝わって居るはず。
 そうして、

【あなたを召喚したのはわたし。わたしの理由であなたを召喚した以上、あなたに迷惑を掛ける訳には行かない】

 生真面目な……と表現するべきですか。淡々とした口調ながらも、内容はかなり思いつめた言葉が送られて来る。それに彼女の言う迷惑。これは試験で悪い点数を取らせられない、と言う部分と、ハルヒの死刑と言う部分の事なのでしょう。
 ただ、この件に関して俺は彼女に生命を救われたと思って居る。そして、その事は彼女に何度も伝えているのですが……。

 しかし、

【あなたを異世界から救い出した事は、二月の段階で、本来消える運命だったわたしを救ってくれた事とで等価交換可能】

 俺が【言葉】を発する前に、今まで何度か繰り返されて来た会話の答えを送って来る長門さん。
 どうにも頑固と言うか、律儀と言うか。そもそも、その最初の段階で彼女の生命を救ったのも、俺と同じ立場の人間。この世界の裏側……異界からの侵食から世界を護って居る人間の内の半数ならば取る当たり前の行動。その程度の事を其処まで感謝されても……。
 もっとも最近は有無を言わさずに、無害の付喪神(つくもがみ)の類も魔と断じて討滅して仕舞う荒っぽい倒魔士も少なくないので、その事を彼女が知ったのなら、確かに多少は感謝されても不思議ではないのですが……。

 倒魔と退魔。似ているようでまったく違うこのふたつの職業に関して思いを飛ばす俺。この差は、軍隊と警察の違いに近いモノが有るのですが……。
 その間隙を縫うかのように、普段よりも小さな。そして、重い彼女の声が心の奥から響いて来た。

【本来、この十二月にあなたを召喚するかどうかは、わたし
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