暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
44.始まりの真実
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そういうことになるね。でも、ボクもまだ見習いだからそこまで詳しくは知らないんだけどね」

 今頃気づいたが、この少女はボクっ娘だ。この可愛らいい顔立ちでボクっ娘というのは若干反則くさい気がする。
 そんな邪念を振り払いながら彩斗は上空を睨んだ。
 空中では、何度も二体のケンジュウが激突し合う。その度に爆風を生み出し、彩斗は吹き飛ばされないように身体を必死で堪える。

「ボクからも一つ聞いてもいいかな?」

「なんだ?」

「人払いの結界があるはずなのにどうやってキミはここまで来れたの?」

「……どうやって来たと言われても」

 普通に家から出てきた以外に正しい解答があるのだろうか?
 それに人払いの結界とはなんだ?
 またしても訳のわからない単語の登場に困惑する。
 これまでの経緯を思い出そうと彩斗は過去に意識を向けた。
 そんな時に限って一角獣(ユニコーン)が咆吼し、鼓膜を激しく振動させる。
 耳を塞ぎながら鬱陶しげに咆吼が聞こえた方向を睨みつけた。

「え……?」

 思わず声が漏れた。
 今度こそ理解することができなかった。
 今までも理解できない状況や理解できない単語が次々と出現したが、まだかろうじてではあったが理解することはできた。しかし今回だけは本気で意味がわからなかった。
 彩斗の脳が思考できる範疇を完全に超えている。

「どうしたの?」

 心配そうに話しかけてくる少女の声もわずかにしか聞こえない。
 そんな機能を失いかけた脳がなんとか命令を送り出し、言葉を紡いだ。

「な、あ……ケン、ジュウを操れ、るのは……吸血鬼だけ、なんだよな?」

 うん、と少女は頷く。

「吸血鬼以外でも使用することは出来るけど眷獣は宿主の寿命を代償に実体化するものだから不老不死の肉体を持つ吸血鬼にしか実質使えないよ」

 つまり……そういうことだ。
 それは彩斗の中で一つの答えを出した。
 考えたくなかった答えではあった。
 信じたくなかった答えではあった。
 しかし彼女の言葉が全ての解答のようなものだった。いや、その言葉を聞く前にハッキリと答えは出ていた。それでも違う結果にすがりたかった。
 それでも彩斗の瞳は確実にその光景を映し出した。神々しい黄金の翼を持つ梟の背に乗る人影。紺色のブレザーを着ており、横でしばった髪が風で靡く少女。

「なんであいつが……」

 その姿を彩斗が見間違えるわけがなかった。
 今日の夜は出るな、と彩斗へと忠告した少女───

「…………柚木」
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