暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
44.始まりの真実
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ずしも全ての答えを知ることができるわけではなかった。そんなことができれば、人生など相当つまらないものであろう。
 だとしてもこれは理不尽すぎた。
 駆け出した彩斗の前方から水が押し寄せてきた。高さはゆうに四、五メートルはあるであろう。それは津波と呼ぶべきなのだろうか。
 海に一切面していない地区であるこの土地であれほどの高さの津波が起きるはずもない。
 これを起こした原因があの化け物のどちらかというのは考えるまでもなくわかった。
 そんなことを考えている暇があれば逃げればよかっただろうか。いや、あれほどの津波から逃れることなど普通に考えても不可能だ。
 その状況に彩斗は笑うことしかできなかった。
 意味のわからないことに自分から首を突っ込んでその真意さえのわからないまま水に巻き込まれて死ぬ。こんな人生を嘲笑う(わらう)しかない。
 津波が襲来するまでわずか数秒。それまでの間に走馬灯が起きるとも思えない。

 ───こんなことなら伝えときゃよかったな。

 死を覚悟して固く目を閉じた。
 激流がこちらへと押し寄せてくる。死の音がすぐそこまで近づいてきていた。
 そんな中で彩斗の耳は遠くの音をとらえた。
 綺麗な音だった。一瞬天使の声かと錯覚するほど澄んだ音。

「獅子の御門たる高神の剣帝が崇め奉る───」

 それは祝詞だ。人間が神に対してみずからの祈願するところや、神を称える心を表現するための言葉。
 幻聴だろうか?
 理不尽な死に方をする彩斗にせめてもの償いで神が聞かせてくれているのだろう。

「虚栄の魔刀、夢幻の真龍、荒れ狂う生命(いのち)の源より、悪しき者を浄化せよ───!」

 祝詞の終わりとともに彩斗の身体を激流が襲いかかる。
 …………はずだった。
 彩斗の身体を襲ったのは、コップ一杯程度の水だった。予想外の展開に目を開ける。
 目の前に誰かがいる。長い綺麗な黒髪が靡いている少女だ。彼女が彩斗を津波から守ってくれているのだろうか。
 死の恐怖から解放された彩斗は安堵のあまり膝から崩れ落ちた。
 地面には津波でもたらされた水で濡れており、ズボンへと染みこみ冷たい。冬場の水とはなんとも冷たいものだ。
 だが、今回はその冷水のおかげで安堵から飛びかけた意識が保たれている。

「大丈夫、キミ!」

 黒髪の少女が彩斗を心配するように振り返る。長い髪を翻して少女はこちらを向いた。その可愛らしい顔立ちに少しだけ見惚れていたが、一瞬で我に戻る。

「あ、ああ。大丈夫だ」

 地面に手をついて立とうとするが、膝が笑って立ち上がれない。そんな彩斗に彼女は手を差し出す。手を掴み立ち上がろうとした時に彩斗の目はまたしても現実離れしたものをとらえた。
 それは彼女が差し伸べてきた逆の手に
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