≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
閉ざされた世界の英雄
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
オンラインゲームだ。ゲームは徹底された平等性のもとに運営され、新規と古参にデータ的な違いは全くない。育てた固有キャラは一戦毎にリセットされ、実力差の生まれる課金要素もなく、あるのはプレイヤースキルのみ。完全な実力主義のEスポーツだ。そんな中で世界大会に参加するまで強くなるには底なしの≪情熱≫が必要不可欠だったわけさ。――ワンマンアーミー、負けない立ち回り、危険の察知、タイミング、精密動作、反射神経、情報戦、撤退戦、追撃戦、チームワーク、指示系統、ビルド構成、学習能力、知識、直感――勝ち続けるためにはどれも最大限まで極めなくてはならなかった。そこで培った技術は、従来のMMOよりもずっとプレイヤースキル依存度の高いSAOにも応用できたよ。おかげで生き残れている」
口からすらすらと出る言葉により昔を思い返しても、もう郷愁の心はない。そんなものは始まりの街に置いてきた。俺の流れるような言葉を聞いて目の前の少女の表情が複雑になる。俺にはその感情を紐解くことはできなかった。複雑に絡み合った毛糸のような表情が俺に問いてきた。
「後悔は、ないの?」
「ない」
自分でも苦笑いするほどの即答だった。
「俺はこの世界のために生まれてきたのかもしれない。必然、だとさえ思っている。俺がプロになったのは必然だった。ゲームへの情熱でプロになった俺が、新時代のゲーム≪SAO≫にやってくるのも必然で、茅場明彦がデスゲーム化を実行したのも必然だと思っている。これは逃れられようのない運命、逃れる必要のない運命だと俺は解釈している」
「……」
返答はない。一瞬の沈黙を認識し、言葉を続ける。
「だからこそ俺は闘う。誇りと情熱、あとついでに命も賭けてな」
「……もしこのゲームに終わりがくるなら貴方の手によって終わるでしょうね。貴方は――貴方は強すぎる」
「いいや、強いんじゃあない。闘い続けているだけだ。闘い続けることに抵抗がないだけだよ。ま、実績のあるただのゲーム馬鹿だ」
真面目に話し過ぎて気分が悪くなりそうなので、最後に肩を竦ませて立ち上がる。大きく伸びをして、ついでに欠伸も。インディゴはそんな様子の俺に呆れたように頭を左右に振るっている。
「本当、よくわかんない人ね。闘ったり怒鳴ったり寝ぼけたりふざけたりして」
「ピエロと言ってくれ、アイ」
「アイ?」
「君の渾名だよ、藍色の藍に、インディゴの頭文字の≪I≫。だから君の渾名が≪アイ≫。どうだ? いい渾名だろ?」
「……まぁいいけどね、他の人がいるところでは使わないでよ。教えるのもナシでお願いね、スバル」
苦笑のような微笑のような、判断しづらい表情で俺の言葉に応える。肯定の二つ返事で返し、ふと螺旋階段の奥の大きなカーブに目を遣り、思いつくままに藍色の
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ