≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
閉ざされた世界の英雄
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MMO中毒者ばかり、それも貴方のような短所の多い装備じゃなく生存率の高めたマトモな装備のプレイヤー。中にはベータテスターでMMOゲーマーでも死んでいく人はいたわ。……貴方と彼らの違いは? ただのMMOプレイヤーじゃ到底、説明がつかないわ」
「そんなに知りたいのか?」
「ええ、とても」
「……わかった、教えよう」
できれば言いたくないし、言ったところで証明できないことだ。言い訳っぽく聞こえるだろうし、自慢にも聞こえるだろう。本当に、この事実だけは向こうでもこっちでも損しかしないものだ。
「俺と彼らの違いは≪情熱≫だ。ゲームを≪暇つぶし≫や≪現実逃避の手段≫や≪交流の場≫として活用しているプレイヤーと俺は精神構造的に違う。俺にとってゲームとは生存の延長線で、誇りと命を賭けることのできる唯一の存在だ。例えデスゲームとなろうと、俺の心は乱れなかった」
「……どういうこと?」
「わからないか? 無理もないさ。結局こっちはどいつもこいつも根っこのとこではゲームは遊戯だと信じているからな。SAOにやってきた自称猛者どもも、遊びとしてしかこの世界を受け入れていなかった。ただのお遊戯だというわけさ! だが俺は違う。茅場明彦のせいで難易度は跳ね上がり、死の危険もできた。だが俺は怯えない! 屈しない! 逃げない! 変わらない! 難しいならそれを超える技術を培えばいい! 死の危険があるから恐ろしいということには直結しない! この世界が百層までならすべて突破するまでだ! 逃げ出して失って見下され惨敗を喫し、一矢も報いることができないほうがずっとずっと悍ましい! ――それが彼らとの違いで、この俺の強さだ」
爆発しそうな感情を抑え込み、二度三度呼吸を挟む。落ち着きを取り戻した俺は、唖然とする彼女に向かって、ゆっくり大きな声で最も重要な事実を最後に告げる。
「俺はプロゲーマーだ。世界最大規模RTSである≪PiratesAndPatriots≫の二〇二二年度世界大会準優勝チーム≪ヴァイタルセブン≫のチームリーダーだ」
空間が固まったかのような長い静寂のあと、藍色の彼女が困惑の表情を混ぜながら言う。
「……そのタイトルは聞いたことがあるわ。アメリカで主流とされている世界最大のオンラインゲームで世界大会の優勝賞金は確か――二百万ドル、二億円……」
「ああ、スポンサーもついていて給料もある。ちなみに準優勝は五十万ドル、三位と四位のチームは二十五万ドルだ。五対五の対戦ゲームだから俺の取り分は五分の一で十万ドル、一千万円だったな」
「私達とはキャリアが違うってわけね……。いえ、そうでもなきゃ納得できなかったわ……。プロ、だったわけ、ね」
「≪PAP≫は総合ユーザー一億人、同時接続数は平均五百万の超規模の
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