第六章
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第六章
「それでもね」
「俺でよかったんですか」
「雄大君でないと駄目だったの」
雄大は裸のままだ。しかし美奈は上にあるものを着ていた。白いブラウスをだ。それを着てそのうえで彼の横で上体を起こしていた。
「絶対にね」
「駄目だったって」
「だって。言っていいかしら」
「言いかしら?」
「好きだから」
美奈の顔が真っ赤になった。
「だからなの」
「俺がですか」
「ほら、やっぱりはじめてはね」
「好きな人と」
「男の子も女の子もそれは同じよね」
その紅に染まっている顔での言葉だ。
「だからなのよ」
「俺と先輩って。それじゃあ」
「一緒よね。だから余計にね」
「俺とだったんですか」
「私でよかったわよね」
美奈はそのブラウスのまま雄大に問うた。
「その、それで」
「そんな、悪い筈ないじゃないですか」
これが雄大の返答だった。
「だって。俺も先輩のことが」
「好きなのね」
「ですから」
自分から言うにはだ。とても恥ずかしくて言えなかった。
「それで」
「有り難う。それじゃあ」
「はい」
「実は今日お父さんもお母さんも帰ってこないの」
こんなことを告げてきた。
「だからね」
「じゃあ今日は」
「暫く二人でいましょう」
また雄大のその手を掴んできた。
「また来て」
「はい、それじゃあ」
「二人で。いたいから」
こう話してそのうえで二人で過ごすのだった。雄大にとっても美奈にとっても最高のデートになった。これがこの一日だった。
二人の仲はここからより親密になった。そしてだ。
雄大はだ。皆に話していた。
「やっぱりさ。相思相愛ってさ」
「どうなんだよ」
「それが」
「いいよな」
にこにこしながら話す。廊下を歩きながら。廊下は行き交う生徒がかなり多い。普段よりも遥かに多い感じすらそこにはあった。
「やっぱりな」
「何だよ、またおのろけかよ」
「それかよ」
「まあそうなるな」
こう話す彼だった。
「それはな」
「ちぇっ、開き直ったよ」
「どうなんだよ」
「それって何なんだよ」
皆彼の言葉を聞いて苦笑いになった。
「全くな」
「いいよな。あんな奇麗な彼女がいて」
「果報者が」
「何処まで幸せなんだよ」
「幸せだよ。それじゃあさ」
「ああ、行くんだな今から」
「そこに」
こう皆から言った。
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