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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十七話 闇の攻防
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帝国暦488年  5月 16日  オーディン  ワルター・フォン・シェーンコップ



フェルナー大佐に案内された店はなんとも雑然とした店だった。ガラの良くなさそうな客が大勢いる。
「ここは?」
「主として平民達が利用する店だ。昼間は食事だが夜は酒を飲みに客が来る。飲んで愚痴を零し憂さを晴らす」
「なるほど、だから俺達もこんな服装を?」
「そういう事だ」

俺もフェルナー大佐も軍服ではない。ごく目立たない、決して上等とは言えない私服だ。用意したのはフェルナー大佐、これを着て出かける用意をしてくれと言われたが、さて……。出入り口の近くに有る適当な席に座りビールとカトフェルプッファー、リンダー・ルラーデンをフェルナー大佐が頼んだ。メニューも見ずに頼んだから何度か来ているのだろう。

「ここに来たわけが分かるかな、シェーンコップ大佐」
フェルナー大佐が顔を寄せて小声で話しかけてきた。
「公は改革を進めている。察するところ、平民達の反応を知りに来た、そんなところか。出入り口に座ったのは逃げやすい様に、入って来た奴を確認するためだろう」
同じように小声で答えるとニヤリと大佐が笑った。合格かな。

「俺の事はアントンと呼んでくれ、俺もあんたをワルターと呼ぶ」
「分かった」
合格だ。
「ここに来るのはもう一つ理由が有る」
「ほう、それは」
「ここのリンダー・ルラーデンは美味いんだ。あんたも一度食べてみれば分かる。病み付きになる」
「そいつは楽しみだ」

何となく楽しくなってきた。ビールと料理が運ばれてきた。乾杯をしてからリンダー・ルラーデンを一口食べた。
「なるほど美味いな」
フェルナー大佐が笑った。
「そうだろう、もう一度乾杯だ」
もう一度乾杯してからまた一口食べた。美味い、確かに病み付きになりそうだ。

“しかし何だな、今回の改革だがありゃ何なのかね。貴族を優遇しているようにも見えるがそうじゃねえようにも見える。はっきりしねえんだが”
“領地は取り上げたぜ”
“しかし借金は棒引きだし融資も呉れてやったんだろう? 丸儲けじゃねえのか”

早速始まったか。中央の方に男が二人、若い男と中年の男が話している。周囲にも頷いている人間が何人かいた。若い方が不満を言っているな。フェルナー大佐に視線を向けると彼が頷いた。今度はカトフェルプッファーを食べてみた、こいつもいける。店が雑然としている割に繁盛しているのは料理が美味いからだろう。まあ女連れで来る店ではないが男同士なら問題は無い店だ。今度リンツ達を連れて来てやろう。

“税金を払うんだ、軍隊も無くなったし農奴も無くなった。貴族と言ったって金持ちとどう違うんだ? 爵位が有るだけだろうが”
“まあそう言われればそうだが……、どうも釈然としねえな
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