第四十七話 闇の攻防
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人権の尊重を守る法を発布する事で劣悪遺伝子排除法を事実上廃法にする。そのためには勅令という形で法に重みを付ける必要が有ると言っていました」
「……」
「エーリッヒにとって改革は国内問題の解消だけでは無かったようです。反乱軍を下し宇宙を統一するための下準備だったのでしょう」
リッテンハイム侯が項垂れている。気持ちは分かる、無力感を感じているのだろう。ブラウンシュバイク公爵家はとんでもない当主を持った。
「侯、コーヒーが冷める、飲まぬか」
「……そうだな、頂こうか」
四人でコーヒーを飲んだ。苦い、それに冷めている。なんとも拙いコーヒーだ。それでもコーヒーを飲むことで少しは気分も入れ替わった。
「しかし統一は可能なのか? 簡単ではないと思うのだが」
リッテンハイム侯の言葉に侯爵夫人が頷いた。
「いざとなればイゼルローン要塞を反乱軍に呉れてやるそうだ」
リッテンハイム侯と侯爵夫人が信じられない物でも見た様な顔をしている。可笑しかった、笑った、久方ぶりに笑った様な気がする。
「笑い事では有るまい、大公」
「わしもエーリッヒにそう言った。笑い事では有るまい、何を考えていると」
「……」
「イゼルローン要塞陥落後、謀略を仕掛け反乱軍に大規模出兵をさせるそうだ。兵力は最低でも八個艦隊程かな。それを帝国領奥深くに誘い込み殲滅する」
侯が信じられないといった表情をしている。また笑ってしまった。そう言えばエーリッヒも笑っていた。どうやらわしも侯と同じような表情をしていたのだろう。
「百五十年、一方的に攻め込まれていたのだ。立場が逆転したとなれば連中、さぞや逸るだろうな」
「……」
「そこを唆すのだ、帝国は混乱しているとでも言ってな。不可能では有るまい」
「……」
何時の間にか囁くような声になっていた。侯が驚愕に眼を見開いている。
「一度大きな損害を受ければ簡単には回復出来ぬ。人口の減少も有るが財政の問題も有る筈だ」
「しかしイゼルローンは如何する。あれが反乱軍に有っては簡単には攻め込めぬ」
リッテンハイム侯が額の汗を拭きコーヒーを一口飲んだ。声が掠れている事に気付いたようだ。
「イゼルローン要塞は攻略可能だ」
「まさか……」
侯も侯爵夫人も驚愕している。
「その事は軍務尚書も統帥本部総長も知っている。攻略案を考えたのはエーリッヒだ」
「……全て想定済み、そういう事か」
「……」
そういう事だ。呆然としているリッテンハイム侯、侯爵夫人を見ながら思った。エーリッヒは全てを想定している。いずれは国内を改革し反乱軍を征服して新たな銀河帝国を創り出すだろう。人類史上最大の帝国、平和と繁栄を享受する帝国。そしてエーリッヒの作った帝国は最盛期を迎えるに違いない。だがそれを生み出した人間は……、溜息が出た。
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