第四十七話 闇の攻防
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し合いの後、少しエーリッヒと話をした。両国の面子がそれを許さぬだろうとあれは言っている」
「面子?」
侯が訝しげな声を出した。侯爵夫人も訝しげな表情だ。
「和平条約を結ぶとなれば相手を反乱軍とは呼べぬ。自由惑星同盟という国家として認めねばなるまい、出来るかな」
リッテンハイム侯が“なるほど”と言って頷いた。侯爵夫人も頷いている。納得したようだ。
「負けているならともかく現状では帝国が優位に戦いを進めている。この状況でそれを平民、貴族の区別なく帝国人が受け入れられるか、その辺りが予測が付かぬと言うのだ」
「確かにそれは有るな」
「それに劣悪遺伝子排除法の事が有る」
リッテンハイム侯の表情が厳しくなった。
「どういう事かな、あれは今では有名無実化されているが」
「確かにそうだ、晴眼帝マクシミリアン・ヨーゼフ二世陛下により劣悪遺伝子排除法は有名無実化された。だがあの法から全てが始まったのも事実。あの法に反対した者達が帝国を逃げ出し反乱軍となった。和平を結ぶとなれば廃法にしろと要求してくるだろうな」
リッテンハイム侯が唸り声を上げた。妻達は息を凝らしてわしと侯の話を聞いている。
「有名無実化されていてもか?」
「有名無実化されているのなら廃法にし易かろう、そう言うとは思わぬか?」
「なるほど」
「反乱軍にはルドルフ大帝が制定したという重みが理解出来ぬのではないかとエーリッヒは考えている。マクシミリアン・ヨーゼフ二世陛下でさえあの法を有名無実化するのが精一杯で廃法には出来なかった。その辺りの機微は説明しても理解出来ぬだろうと。むしろ意地になって廃法にする事を要求しかねぬと」
リッテンハイム侯が大きく溜息を吐いた。気持ちは分かる、わしもエーリッヒから聞いた時は溜息しか出なかった。
「確かに和平は難しいな。一時的には結べても恒久的なものにはならぬか……」
「理は反乱軍にあろう、名を捨て実を取れと説得してもいずれは破綻するとエーリッヒは想定している。五年持つかどうか……。その場合両国の感情の齟齬は酷いものになるだろう。それくらいなら最初から統一を考えた方が妙なしこりは残らぬ、そう考えている」
リッテンハイム侯がまた溜息を吐いた。全く気の滅入る話だ。聞くだけで気が滅入る、ならばそれをどうすべきか考えているエーリッヒの心労は……。気が付けばわしも溜息を吐いていた。
「いずれは平民達の人権の尊重を守る法を皇帝の勅令として発布する必要が有るとエーリッヒは言っていましたわ」
アマーリエが話し出した。わしが疲れたとでも思ったか……。
「反乱軍を打ち破り統一した後は彼らを安心させなければならない、そのためにはどうしてもそれが要ると。それなしでは新領土の統治は上手く行かないと。劣悪遺伝子排除法は有名無実化されている。新たに
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