暁 〜小説投稿サイト〜
Swim-Final Round-
Bad Relay
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[1] 最後
「この感覚にはいつまで経っても慣れないな。」

 此処は中学競泳の新人市大会。いつものように後ろ向きな台詞を心の中で吐きながら、直はスタート台に昇った。学校のプールと違って前方に少々角度の付いたFINA公認のスタート台が、スタート前の緊張感に拍車を掛ける。一往復、100mの戦いが行われる水面は飛び込む前から大きく揺れていた。キックの起こす波で。

「リレーメンバーは永川しか決まってないから、このタイムトライアルで残りを決めるぞ。」

 本格的な競泳を始めて1年半、リレーには毛ほども縁がなかった直には、顧問の言葉はただただ魅力的だった。直の所属する水泳部には、4人が出場するリレーの固定メンバーが現状三名いるが、この新人大会では永川を除いた二名が別の大会に出場するため、残りのメンバーでリレーを泳ぎチームを新人県大会に進ませねばならない。

 しかし、タイムトライアル時点の直にはそのような重圧さえ吹き飛ぶほど、「リレーに出られる」という事実が羨ましく、眩しく見えたのだ。その感情に任せてプレッシャーなく臨んだ100mタイムトライアルで直は自己ベストの1分11秒55を記録し、1分10秒台に向けて競い合っている同級生の梶本を上回り、同じく1分10秒台を目指す同級生の池谷、1分5秒台を記録した後輩の森野と共に残りメンバーに決定した。そこまでは順調だった。

「不安要素しかない」

 招集場でそうぼやいてしまうほどに、直は急速に自信を失いかけていた。リレーという慣れないことを意識するだけでもバイオリズムが狂う。それをはねのけられず、2つの個人レースのタイムは目標値に達しなかった。本日3レース目の400mリレー第三泳者として泳ぐという「個人競技は一人当たり2種目まで」のエントリー制限を越えた戦いに初めて赴く直にとっては逆風しか吹かない一日だったからだ。

 既に第一泳者の森野は泳ぎ終わり、現在は第二泳者池谷が残り25mを切った所だ。三度目の醜態を晒す時間が刻一刻と迫る。順位を落とすのが怖い。そのせいで県大会に進めないのはもっと怖い。周囲に何と言われるかわからず怖い。個人の時の比ではないほどに喉づまりの感覚がある。

 池谷の指先がプールの壁を叩くまであと50cm。せめてこいつには負けないようにしようとだけ決めて、まだまだ後ろ向きな心のままの直はスタート台を蹴った。全身に冷たさが行き渡ると同時にドルフィンキックを開始する。直の感覚では抵抗はいつも通りくらい、ならば何も考えるまいと全力で腕を?く。

 50mのターンから数秒後、水面に上がってきた直の全身が「もう持たない」と悲鳴を上げる。競技だけで何百m、ウォーミングアップその他諸々を含めるとその倍は泳いだであろう彼の泳ぎは、足が少し沈みかけ、かなり崩れた状態だ。そのまま惰性でもう50mを持たせ
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