もう一つの運命編
第1話 「ひとり」と「ふたり」
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めた。
二人ともが降りてから、ローズアタッカーはロックビークルに戻り、初瀬がそれをキャッチした。
「レトルト中心にしますか? それともちゃんと自炊にします?」
「料理できんのか?」
「亮二さんに食べていただける程度にはできると思いますよ」
他でもない初瀬に、自分の手料理を食べてもらう。巴は想像して、つい、にやけた。
「何だよ」
「な、なんでもありませんっ」
巴は初瀬に背を向け、先に商店街に足を踏み入れた。
アーケード内に放置されていたトラックの横を潜り、そこで、巴は見てしまった。
光実が亀のオーバーロードをけしかけ、一人の少年を襲っている場面を。
「! あいつ…っ」
同じくトラックを横から抜けた初瀬も、光実の凶行を見た。
亀のオーバーロードが、甲羅から蛇のような太い紐で少年を巻きつけ、締め上げている。あのままでは圧死する。
巴と初瀬は同時に駆け出した。
「やめ――ろぉ!」
巴は初瀬と息を合わせて亀のオーバーロードに体当たりした。弾みで蛇の拘束が緩んだのか、少年は道に落下した。
「おい、しっかりしろ! おい!」
初瀬が少年に呼びかける。巴も反対側で膝を突いた。
少年は呻きながら、うっすらと目を開けた。まだ意識を失ってはいない。
スーツから埃を落としながら立ち上がる光実を、巴はふり返った。
「光実さん――あなた、碧沙を救うんじゃなかったんですかっ。どうしてこんな真似を」
「僕には舞さんが必要だから。関口さんにとってのその男と同じだよ。舞さんがいてくれれば、それだけで僕だって誰にも負けない」
少年の手が動き、タイルの上を這う。すぐ近くに転がっていた小さなインカムを取りたいのだと察し、巴はインカムを取って少年の手に握らせた。
「戒斗さん、戒斗さん、戒斗さん……!!」
その名だけしか知らないように、呼べば呼ぶほど取り返しのつかない何かを削りながら、少年は通信機に呼びかけ続ける。
初瀬が立ち上がった。
「トモ、ドライバー貸せ」
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