第六章
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っとこっちに染まってきた?」
「そうみたい」
それに自分でも気付いた。
「何か」
「ほらそろそろわかってくる思うで。大阪のことも」
「そうかな」
「そうやて。クリスマスいうても色々や」
妙子はもう善哉に箸をつけていた。
「大阪には大阪のクリスマスがあるねんで。わかってくれたらいいわ」
「そうだよな」
その当たり前のことにも今気付いた。
「わかったら。はよ」
また善哉を食べるように言ってきた。
「食べよな。美味しいで」
「ああ」
妙子に言われるままその善哉を食べた。それは確かに甘く、美味しかった。冬の寒さを忘れさせてくれる程温かくもあった。正友はその温かさも気に入った。
それを二つ食べ終えて店を後にした。外はもう夜になっていた。
何時の間にか妙子は正友の手に自分の手を絡めてきている。本当に彼女になっていた。
二人で夜の大阪の街を歩く。クリスマスのネオンと明るい音楽、そこに大阪独特の看板と音楽が相変わらず不思議な調和を為して世界を形成していた。
「これからどうする?」
妙子は正友に尋ねてきた。
「もう暗いけれど」
「それって」
「うちはええんよ」
正友の目を見てこう言ってきた。
「そやから」
「すぐそこだしな」
正友はそれに応えて述べた。道頓堀からそうしたホテル街まではすぐなのである。これは彼も知っていた。そうしたものも集中しているのが大阪なのだ。
「どうするん?」
「ううん」
どうしようかと思った。このうえない美味しいシチュエーションだ。しかし。
「それはさ、今度にしないか?」
彼は妙子にそう返した。
「今度って?」
「ああ、今度さ。何時でも行けるだろ、そっちは」
「まあそやけど」
「けれどクリスマスは一年に一度だしよ。だから」
「デート続けるんやね」
「ああ、駄目かな」
妙子の目を見返してこう問い返した。
「嫌ならいいけれど」
「それでもええよ」
だが妙子はそれを拒まなかった。にこりと笑ってそれを受け入れた。
「何時でも行けるのはホンマやし」
「じゃあさ」
「うん」
二人は互いの顔を見ていた。そして言う。
「このまま二人で」
「道頓堀で洒落こも」
そうして二人はそのままクリスマスソングと六甲おろしが混じり、イルミネーションと河豚に蟹、食いだおれの親父が一緒に存在する街を歩いていった。大阪の賑やかなクリスマスの中を。ケーキとたこ焼き、七面鳥とお好み焼きの中を。
浪速のクリスマス 完
2006・11・1
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