アインクラッド 後編
春告ぐ蝶と嵐の行方
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めたくなかっただけなのかもしれない。どちらなのかは、自分でも判断が付かなかった。
その後わたしは窮地をマサキ君に助けられ、何故かはよく分からないけど彼のことが気になって。気付いたら、今ここにいた。正直、まだ不安や怖さは残っているし、わたしが今までしてきたことは何だったのかも分かっていない。改めて、分からない尽くしが続く三日だと思う。
でも。マサキ君と一緒にこのまま進んで行けば、その答えの手がかりが見つかりそうな気がしたから。
「そろそろ、行くぞ」
「……うん」
わたしは大きく頷いて、シリカちゃんを呼びに行こうとするマサキ君に続いた――そんな時。ふと、花壇に挟まれた小路を歩く男女の二人組が目に入った。親密そうに腕を絡ませ、笑いながら歩いている。はっと気付いて辺りを見渡せば、同じような組み合わせがちらほらと見受けられる。つまりここはいわゆるデートスポットなのだろう。そしてシリカちゃんがここに来てすぐ離れてしまったため、今までわたしはマサキ君と二人で立っていたことになるわけで、ということはわたしたちもひょっとすると端からはそういう関係に……?
さっきまでの感傷はどこへやら、真っ赤になった自分の頬を隠すように手で覆いながら、距離の離れてしまったマサキ君を小走りで追いかけた。
「あの……マサキさん。一つ、聞いてもいいですか?」
南門からフィールドへ出てすぐ、シリカちゃんがおずおずと尋ねた。マサキ君が視線を向けて応じる。
「昨日、あたしに似た女の子を見たことがある、って言ってたじゃないですか。それで、その人のこと、ちょっと気になっちゃって……。もしよければその子のこと、教えてくれませんか……?」
現実世界の話を持ち出すことは、SAOで最大のタブー。そのためか、質問するシリカちゃんの声は小さく、口調は弱々しい。わたしがシリカちゃんからマサキ君へ視線を移すと、マサキ君は特に気にした風もなく僅かに頭上を仰ぎ、記憶を探るような素振りを見せた。
「……会ったのは確か、四年ほど前だったか。歳は多分、君よりも少し小さかった。何度か会ったはずなんだが……済まない、よく覚えていない」
「そう、なんですか……」
あまり要領を得たとは言い難い返事だったが、シリカちゃんがそれ以上深く聞くことはなかった。
沈黙。三人分の足音だけが、筋雲をうっすらと漂わせた青空と覆い茂った草むらに響く。と、そんな時、《索敵》スキルに一つの反応を捉え、わたしは足を止めた。それを見たシリカちゃんがワンテンポ遅れて振り返りつつ歩みを止め、それと同じタイミングでマサキ君も立ち止まる。
「どうかしましたか?」
「向こうに敵がいるみたい。こっちに来てるから、もう少しでエンカウントすると思う。やりすごすこともでき
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