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浪速のクリスマス
第五章
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か阪神阪神じゃないか。おかしいぞ」
 彼は横浜ファンである。妙子の贔屓は言うまでもなかった。少なくとも大阪においては巨人ファンは稀少種である。その存在自体が悪とされることもある。大阪、いや関西では阪神というのは鉄の不文律なのである。巨人を応援することはある意味タブーなのである。
「クリスマスでもよ」
「それがええんやないか」
 しかし妙子の返事はいつもの通りであった。
「阪神やで、やっぱり」
「野球はか」
「そや。巨人の野球なんか面白いことないやん。あんなええかっこしい」
「まあな」
 彼も横浜ファンだからわかる。それでクラスではかなり馬鹿にされ孤立しているが。だが横浜や広島といった他の球団には寛大なのが阪神ファンである。これが巨人になると絶対に許されないのだ。
「あんなチーム潰れてしまえばええんや」
 ここまで言う。
「そして阪神の優勝、十連覇やで」
「横浜はどうなるんだよ」
「まあ適当にやっといてええんちゃう?」
 こんな扱いである。
「そのうち優勝するで、多分」
「多分か」
「そや、そのうちな」
「えらい言われようだな、何か」
「だって横浜弱いやん」
 それでこの言い様だ。
「甲子園でもいつも負けてるし」
「阪神がこの前までそうだったじゃないかよ」
 たまりかねて言い返す。

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