第四章
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第四章
「その服、何なんだよ」
「似合う?」
「似合うとかそういう問題じゃないよ」
彼は言った。呆れた顔になっていた。
「コンサートに行くんじゃないんだぞ」
「変かな」
「変とかそんなんじゃなくてよ。何ていうか」
何か大阪女のセンスに開いた口が塞がらないのだ。とはいっても周りの女の子も大体同じ格好である。やはりかなり派手だ。
「それで家から来たのかよ」
「そうやけど」
平気な顔で答えてきた。
「けど皆同じような服着てるで」
「うう・・・・・・」
見ればそうである。もっと凄い格好もある。ここは大阪だ。横浜とは違うということをあらためて認識させられた。妙子もそれを言ってきたのだ。
「じゃあ何処行くん?」
「入るかい?」
すぐ後ろにあるハードロックカフェを指差して問う。大阪にはいささか似つかわしくもないと言えるアメリカ風の店の外観であった。
「ここでさ」
「じゃあそこにしよ」
妙子は迷うことなくそう答えた。
「ほな」
「ああ」
二人はそのまま店に入った。アメリカの古き良き時代がそこにはあった。ハードロックとはいっても落ち着いた木造の床に白い壁、そこに壁に様々な絵や写真がかけられている。天井には鉄パイプが露わになっていてそれもいい趣きであった。カウンターは赤と黒でいい感じであった。
「じゃあここに座るか」
「うん」
二人は手頃な席に向かい合って座った。そしてそこでメニューを頼んだ。勿論鶏の料理である。流石に七面鳥というわけにはいかなかった。頼んだのはトュぺロ=チキン=テンダース、パン粉で揚げた柔らかい鶏の肉である。その他にサラダやスープも一緒である。結構なボリュームだ。
「やっとクリスマスらしくなったっていうか」
「そうなん?」
妙子は正友の言葉に顔を向けてきた。
「何かさ、そんな感じしないんだよ」
正友はそれに応えて顔を顰めて述べた。
「大阪にいるとよ。普通に皆たこ焼きとかお好み焼きとか食うしさ」
「ええやん」
妙子はそれを問題とはしなかった。本当にこの声もあっけらかんとしたものであった。
「ええやんってそれでいいのかよ、クリスマスだぜ」
「クリスマスでも食べたいものは食べたいやん」
「そうなのかよ」
それが正友にはどうしてもわからないのだ。ムードがないとさえ思える。横浜の感覚ではそうである。
「横浜やったらやっぱりあれやろ?洒落た店に行って」
「ああ」
その通りであった。それを妙子にも言われた。
「けれどそれは横浜やで。大阪はやっぱり」
「善哉でもいいんだな」
「そういうことや」
妙子は口元に笑みを浮かべてこう述べた。
「何でもええやん。美味しかったら」
「けれどケーキは絶対か」
「そういうこと。大阪のケーキ美味しいやろ?」
「ま
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