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浪速のクリスマス
第四章
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あな」
 それは認めた。確かに美味い。絶妙のバランスで口の中を支配する。だが横浜のものと比べると味が濃いように思えるのはこれもまた大阪だからであろうかと思った。
「ここの店もチェーン店なのにこっちの店の方が美味いな」
「食べ物だけは他のところに負けへんで、大阪は」
「ふうん」
「まずかったらな、すぐに潰れるんや」
 しれっとした言葉で述べてきた。
「怖いな、それって」
「それが普通やん。まずい店なんかいらへんわ」
 随分厳しい言葉であった。だが表情は普通である。何か女子高生の発言とは思えない程であった。
「そやろ?」
「そうだけれどな」
 頷くことはできるがそれでもあまりにも厳しいと思うのもまた事実だった。
「何かよ」
「東京の店とどっちが美味しい?」
 すぐにまた問うてきた。
「ここの料理」
「こっちだな」
「やっぱりそうやろ」
 どうやらこの言葉が聞きたかったらしい。にこやかな笑みになった。ライバル意識を満足させたからであろうか。
「大阪の方が美味しいもんな、食べ物は」
「それはな」
 正友もそれははっきりわかった。特に東京のそれは高い。これが彼にとってはかなり驚きだったのだ。大阪は安くて味もいいのだ。
「食べ物はやっぱり大阪やで」
「あの豚マンも美味しいしな」
「蓬莱やろ?」
 難波の有名な豚饅の店である。他には餃子もある。油っこい豚饅が人気である。おやつにもよく食べられる。
「ああ、お袋がえらく気に入ってな。よく食べてるよ」
「横浜のより美味しいん?」
「中華街のか?」
「やっぱりあっちの方がええんちゃうかな、って思って。やっぱり本場やし」
「そっちは別に変わらないな」
 これもまた素直な感想であった。実際に両方を食べてみてこその言葉であった。
「横浜のも蓬莱のも」
「そうなの」
「俺はそう思うよ。それでさ」
「うん」
「その夫婦善哉は美味いの?」
 今日のデートの核心を問うた。
「その店」
「それは行ってからのお楽しみやで」
 だがその質問にはにこりと笑うだけで答えはしない。
「行ってからやね」
「そうなんだ」
「それで今日のメインイベントの一つやけれど」
「ああ、わかってるよ」
 本来ならばこれがメインイベントじゃないかという突っ込みはもう無駄なので言わなかった。どうも大阪のそうしたところが馴染めないのだが。


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