第三章
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もした。
「じゃあ止めにする?そやったらうち」
「ああ、いいよ」
といっても今は十二月である。デートをするならクリスマス、これは鉄則と言っていいものであった。これは大阪でも変わりはしない。
「それでよ。もう決めた」
「じゃあそれでええな」
「で、その前に行くのか後に行くのか」
問題はそこであった。生きるべきか死すべきか。そういうことである。
「他に食べるもの?」
「どっちがいいんだよ。俺はどっちでもいいけれどよ」
「じゃあ先にしよ。それで後で」
「デザートでか」
正友はそれを問うた。
「ケーキの後で」
「結局それは食うんだな」
「クリスマスやで」
妙子はそう主張する。流石にそれは忘れてはいないらしい。
「ケーキ食べなあかんやん」
「まあな。それじゃあ決まりだな」
「四時に大阪球場の跡地でどう?」
「それじゃあハードロックカフェか?」
何かそこで食べたくなった。カプリチョーザもいいが大蒜が強いのと一品の量がかなり多いのでそれを敬遠したのだ。中にはそこで二皿あけてワインのボトルを二本あける者もいたりするが。
「別に何処でもいいけれど」
「いいのかよ」
「善哉さえ食べられたら」
「ああ、そうなんだ」
その執着がかえって怖かった。何が妙子をここまでさせるのか。そもそもどうしてクリスマスに善哉かという問題もある。正友にはわからない世界であった。
「ほなな」
「ああ、四時にだな」
「楽しみにしとくで」
「ああ」
こうして理解できないものを抱えながらクリスマスにデートをすることになった。彼はそれなりにお洒落をしてハードロックカフェの前にやって来た。鮮やかな赤のコートが眩しい。
このコートは横浜にいた時に買ったものだ。その時はかなり派手で大丈夫かと思ったが大阪ではこうしたコートも普通であった。何しろファッションが派手なのだ。皆が皆横浜の人間の目からするときついまでである。
そして妙子も。黒い半ズボンに同じ色のストッキング、白いセーターに黒いロングコート、ブーツまで白である。何処かのロックバンドみたいな格好だ。
「待った?」
「待ってないけどさ」
そのファッションを見ながら応える。
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