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戦国異伝
第百八十五話 義昭の挙兵その四

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「ここは御主達に任せた、それで猿夜叉」
「はい」
 長政が名前を呼ばれ応える。
「それでは」
「よいな」
「今すぐにでも」
 長政もこう応える。
「用意は出来ております」
「では行くぞ」
 こう長政に言ってだった、即座に。
 信長は馬に乗った、長政も彼に続く。
 すぐに浅井の軍勢が動いた、彼等は摂津から都に向かった。彼等は風の様に摂津から都への道を進んでいた。
 その中でだ、長政は信長に言った。
「都に近付けて布陣していたのが」
「よかったな」
「はい、それで」
「こうしてな」
「すぐに動けます」
 都にというのだ。
「そして都に入り」
「そうしてじゃ」
「幕府をですな」
「抑える」
「それで幕府は」
「最早致し方あるまい」
 苦い顔でだ、信長は長政に答えた。
「挙兵されてはな」
「最早収まりがつきませぬか」
「幕府を潰さねばな」
 そうしなければというのだ。
「最早致し方ない」
「左様でありますか」
「そこまでしたくはなかったがのう」
 信長の本音である。
「わしは公方様を立ててな」
「そうしてですな」
「天下布武をするつもりじゃった」
「では義兄上は」
「何になるつもりだったかというのじゃな」
「将軍になられぬのなら」
「幕府は置いておいてな」
 そして、というのだ。
「わしはそれを担ぐ一の人としてな」
「天下人としてですか」
「そうして天下を治めるつもりじゃった」
「管領や執権になられずに」
「それでは幕府の中におることになるな」
 それでだというのだ。
「それはせずにな」
「その幕府を担ぐ人としてですか」
「天下布武をしていくつもりじゃったが」
「しかしそれも」
「公方様はわしを倒す為に挙兵された」
 それでだというのだ。
「それならばな」
「では」
「倒すしかない」
 幕府を、というのだ。
「そして公方様もな」
「あの方もですな」
「都からな」
 追放という言葉はあえて言わなかった。
「そうなる」
「どこまでもそうなりますか」
「そういうことじゃ、ではな」
「都に入れば」
「すぐに収める」
 義昭の挙兵、それをというのだ。
「そして摂津に戻りな」
「本願寺を」
「急がねばならぬ」
 時間の余裕はないというのだ。
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