第百八十五話 義昭の挙兵その三
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「それではじゃ」
「はい、その様に」
「今は待ちましょう」
「兵糧もありますので」
「ゆうるりと」
こう話してだ、彼等はだった。
囲まれるその中でも動かなかった、その義昭の周りには。
最早闇の色の服の者達しかいなかった、具足も旗もだ。
彼等を囲む中でだ、信行はいぶかしむ顔でこう言った。
「闇の旗もあるが」
「闇の中にですか」
「足利家の家紋がありますな」
「何と異様なことじゃ」
その闇の旗の中の足利家の家紋を見ての言葉だ。
「あの旗は」
「ですな、まことに」
「異様と言う他ありませぬ」
「足利幕府には色はありませぬが」
この辺り織田家や他の力のある家と違う、足利家にはその家の色となっている色は存在しないのである。
だから旗も本来は青でも赤でもない、ましてや闇の色でもない。
しかし今は違う、それで信行も言うのだ。
「異様過ぎるわ」
「ですな、一向宗の者にもいましたし」
「都の僧兵共の色でしたが」
「公方様も襲った色ではないですか」
「あの僧兵達の色でしたから」
「公方様は何をお考えじゃ」
信行はいぶかしむ顔のまま言うのだった。
「ご自身を襲われた者達の色である筈なのに」
「それでもですな」
「ああして周りに置かれるとは」
「どうお考えなのか」
「そのこともです」
「全くわかりませぬ」
「訳がわかりませぬ」
「それで公方様はどちらにおられる」
信行は囲む室町第を見据えながら家臣達に問うた。
「陣頭に出ておられるか」
「いえ、奥におられる様で」
「出て来られませぬ」
「天海殿と崇伝殿もご一緒とのことですが」
「どうやらお二人と」
「今も」
「左様か、ではお姿は見られぬか」
信行は家臣達の返事をここまで聞いて述べた。
「残念じゃな、しかし」
「しかしですか」
「またか」
天海、崇伝と共にいるということにだ、信行は言うのだった。
「あの二人の僧か」
「よくわからぬ方々ですが」
「それでも」
「あの二人の素性も気になるがのう」
それでもだと言うのだった。
「ここはな」
「はい、では」
「ここは」
「やはり攻めぬ」
それはまだだというのだ。
「わしは戦下手じゃ、特に攻めることはな」
「だからですか」
「殿に」
「そうじゃ、今はこうして囲むだけでよい」
既に早馬は送ってある、それでだというのだ。
信行は囲むだけでそこで動きを止めていた、そして彼がそうしている間にだった。
早馬が実際に毛利水軍との戦に勝ち石山を本格的に囲んでいる信長の下に来た、それを受けてすぐにだった。
信長は家臣達にだ、こう言った。
「都で公方様が挙兵された」
「何と、ここで」
「我等にですか」
「そうじゃ、それでじゃ」
それ故に
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