聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第一幕
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った。
突然であるが、影村隆也は俗に言う『嫁馬鹿』である。寝顔を他の男に見られただけで切りかかりに行き、仮想世界でぼっこぼこに叩き潰してから燃やしてしまう程度には嫁馬鹿である。
そんな隆也が、過日のリナが身に付けていた装束を再現したい、と思うのは当然のことと言っても差し支えないかもしれない。
隆也は、それを今年のリナへのクリスマスプレゼントにしたいと思っていた。
のだが。
「なぜだ……なぜ今日が12月24日なんだ!!!」
不自然なことに、いつの間にか12月24日だった。遅くても明日までに、マフラーを再現して彼女に渡さなければならない。
だが、今だそのマフラーは素材購入にすら至っていない。というか触ったことがないので、どんな素材だったのかもわからない。サプライズにするつもりなので、リナ本人に直接聞くわけにもいかない。というか今彼女は友人たちと買い物に出かけており、さりげなく聞く、という手も使えない。
「チクショウ!! 何でもっと早く聞いておかなかった俺!!」
だが後悔後に立たず。すでに打つ手はない。どうする。とりあえず質感はこの際無視することにして、素材を買い込みに行かなくてはならない。だがこれまた不自然なことに、既に時刻は午後の2時。これから買いに行って編んでいては、リナが帰ってくるまでに完成させることができないかもしれない。
どうする。どうする。どうする――――
「お困りのようだね、ゼツ君?」
ふと、軽快な声を聞いて、後ろを振り返った。
部屋の入口に、見知らぬ人物が立っている。くせ毛の少年だ。自分と同じくらいの年齢だろうか。先端にいくほど赤なのに、基本色は白、という奇妙な色のマフラーを巻いた少年。どこかで見た様な気がしなくもないが、たぶん無い。
「誰だ、あんた……というか、どうやってこの家に入った!」
隆也の家には、様々なセキュリティシステムや原始的なトラップが仕掛けられている。今でこそリナはそれらを悠々と避けて通れるようになったが、所見ではキリトですら見事に引っかかったシロモノだ。それを無効化してきた――――?
「因みにセキュリティは全部無視して、直接ここに来た」
心を、読んだ……?
隆也の困惑をよそに、少年は続ける。
「僕は《天宮陰斗》。君の願いを叶えに来た。マフラー、欲しいんだろう?自分の手で勝ち取る方法がある、と言ったら、どうする?」
「……何?」
その話には、少々興味があった。
猫の手も借りたい状態である隆也だが、もし「あげるよ」と言われたのだったら断っただろう。それは自分が自分の手で成し遂げたことではないからだ。
だが今、この少年は――――
「勝ち取れ、だと……? 面白れぇ!
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