聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第一幕
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か誰かが立っている。和人ではない。見知らぬ男。
年のころは十七歳ほどか。くせ毛で、先端にいくにつれて薄い赤色になっていく、白いマフラーを巻いている。表情は、全てを小ばかにしたような、笑顔。
何より、ラテン語で喋ったのがあまりにも奇怪だ。つまり彼は、真夜美がラテン語を始めとする様々な言語をマスターしていることを知っている、ということなのだ。だが、真夜美はあの少年に見覚えがない……。
「……誰。どこから入?」
いつもならここで、さらに違う言語で撃退する真夜美だが、今だけは衝撃が先走り、日本語でカウンターしてしまう。
いや、恐らくはこの少年に何語で…例えば旧ヘブライ語で…返しても、きちんと答えが返ってくるだろう。
「初めまして。ミヤビさん」
「……ッ! なぜ、その名前を、知?」
その名前は、真夜美のもう一つの名。仮想世界で彼女が操るアバターの名前。
「なぁに、多少の情報網があれば分かる話さ。……第一の質問に答えよう。僕の名前は《天宮陰斗》。いわば、この世界の《神》の化身だ」
そう言って、《天宮》と名乗った少年は笑う。
「どこから入ったのか、と言われると返答に困るけど、なぜ来たのか、なら言えるよ――――君の願いに、答えよう。愛する誰かのためへのプレゼントを、その手で得るための試練を与えよう。『この世界に嘘はない』。さぁ、おいで――――」
瞬間。
ぐるり、と、視界が回った。
「なっ――――……!」
目を覚ました時には、そこは寝室ではなく、青空が広がる外の光景。それも、どこか旧SAOやアンダーワールドに似通った、大自然。
ふと見下ろすと、その服装は、美風真夜美のそれではなく、《翡翠の剣士》ミヤビのものに変わっていた。
***
「あれ……どうすれば再現できるかなぁ……」
影村隆也は、机の上に突っ伏して舌打ちをした。
隆也が悩んでいるのは、今から二年と少し前、自分達の運命を大きく変えた、《ソードアート・オンライン》内でのことに関する事情だった。
隆也の恋人である中本理奈は、かつてSAO内で《リナ》というプレイヤーネームを名乗っていた。武器は片手剣。受け流し系の攻撃を得意とする、女性プレイヤーにしてはなかなか上等な腕前の持ち主だった。
そんな彼女と、隆也ことプレイヤーネーム《ゼツ》がSAO内で最初に出会った時、彼女が巻いていたマフラー。隆也は、それが死ぬほど再現したかった。
「だってさ……可愛かったんだもの……」
残念ながらリナはその後はマフラーをつけない事が多くなってしまったのだが、隆也はあのスタイルが好きだ
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