第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二章
大阪の地下街は何かと派手だ。東京や横浜のそれとは雰囲気がまるで違う。何故か擦れ違うサラリーマンの歩く速さはかなりのもので女の子達の服装は派手だ。女子高生の話し方はまるでおばちゃんである。
「そんで昨日な」
「あいつそんなん言うてたんか」
「そうなんや。それでな」
「ふん」
隣でその女子高生達が話をしているのを聞いている。彼はそれを聞いて本当にここが大阪なのだと再認識させられていたのであった。
「本当に全然違うな」
あちこちでお喋りが聞こえる地下鉄の中で考えていた。
彼の名は鈴木正友。横浜から三ヶ月前に親の仕事の関係で引っ越してきた。生まれも育ちも横浜だったがいきなり大阪に放り込まれたのだ。
入った高校も当然大阪の高校だ。大阪に来て驚いたことはとにかく食べ物の話ばかりでしかもたこ焼きとかうどんとかそうした話ばかりだったからだ。それにかなり辟易していた。
電車の中でもそうした食べ物の話が普通に聞こえてくる。隣にいるその女子高生達である。
「それでうちこの前あの店言ったんや」
「あの店って?」
「この前言うたやん。ほらあれ」
「あれって何だよ」
正友はそれを聞きながら思った。大阪独特の話し方にもやはり違和感を覚える。横浜のそれと違い何か垢抜けていないのだ。泥臭いと言えば泥臭い。
「ああ、あの店やな」
「そうそう」
それで通じるのがまた不思議だった。今でも異世界にいる気分になる。
「夫婦善哉」
「舞台になっとったな」
「玉ちゃん出てたな」
最初それを聞いて誰かと思った。友達か?とさえ考えた。
「玉緒ちゃんやろ。うちあの人知ってるで」
「だからあんた知らないだろ」
思わずそう言いたくなる。女優の中村玉緒のことである。彼女は今は亡き夫勝新太郎と最初で最後の舞台共演で夫婦善哉に出演していたのである。
「あの人出てたんやったな」
「何か真面目にやってたって話やな」
「凄かったで、結構」
「へえ」
「あの人演技美味いで、かなり」
これは事実である。中村玉緒は元々はかなりの演技力を持っているのである。最近はバラエティであまりにも有名になってしまったが。そもそもお嬢様で世間知らずなところがありそれが表に出ているのである。邪気のない人柄でもかなり有名になってしまっている。
「そうなんや」
「それでその店やけれどな」
「一人で行ったん?」
「そんなわけないやん」
明るく笑ってそれに応えていた。あっけらかんとした声であった。
「夫婦善哉やで」
「そこだったら何かあるのか?」
それを聞いてふと思った。大阪のことはまだまだ知らない。だから夫婦善哉と言われても何処にあるのかさえわからないのだ。
「二人で行くに決まってるやん」
「彼氏とやな」
「もちろんや。ばっちり決め
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ