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美しき異形達
第二十八話 横須賀の思い出その一

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            第二十八話  横須賀の思い出
 薊は寮の部屋の中で朱美、伸子と三人で談笑していた。その時に朱美が微笑んで二人にこんなことを言った。
「最後ね」
「最後って?」
「ええ、高校生活最後の夏休みがね」
 それで、というのだ。
「はじまるわね」
「ああ、先輩三年生だからな」
「それでなのよ」
 笑顔で薊に話すのだった。
「何か感慨深いわね」
「けれど先輩確か」
 伸子がその朱美に言う、寮の中央に三人で車座になって座ってそのうえでそれぞれの座布団やクッションに座って話しているのだ。
「大学は」
「ええ、八条大学にね」
「進学されるんですよね」
「まだ試験は受けてないけれど」
「それでもですよね」
「推薦だから」
 しかも学内のだ。
「あと成績と素行も評価してもらってるから」
「合格は、ですね」
「多分だけれどね」
 確実とは言えない、しかしというのだ。
「合格出来ると思うわ」
「それじゃあやっぱり」
「ええ、大学に入ってもね」
 その後の四年もというのだ。
「こっちにいるわ」
「神戸にですね」
 この街にある八条町、つまり八条学園がある街にだ。
「おられますね」
「大学の女子寮に入るかアパートに住むわ」
 そうするというのだ。
「進学したらね」
「そうですよね、それじゃあ」
「けれど高校生活はね」
 この三年に限って言えば、というのだ。
「この夏休みがね」
「最後の夏休みですか」
「そうなるからね」
 それ故に、というのだ。
「感慨があるわ」
「そうですか」
「夏は実家に帰ってね」
 そうして、というのだ。
「受験勉強よ」
「そればかりですか」
「推薦でも受験生だからね」
 その立場だからだというのだ。
「それはしないといけないから」
「大変ですね」
「ううん、それでもね」
「それでもですか」
「それが当然だしね」
 受験生の立場だからだというのだ。
「それに勉強にはコツがあるから」
「コツ、ですか」
「まず走ってね」
 そうして、というのだ。
「走らなくても身体を動かしてね」
「それからですか」
「シャワーも浴びてすっきりして」
「あっ、ストレスを解消してですね」
 伸子もそれはわかった、それで朱美にこう返したのだ。
「そうしてからですね」
「後は覚えるのよ」
「教科書や参考書を」
「そう、そうしてね」
 朱美は伸子、そして薊に話していく。
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