第六章
[8]前話
「いいわよ」
「それで御飯の後は」
「子供達を見てくれるかしら」
「何だ、何かあったのか?」
「勉強を見て欲しいのよ」
「やれやれ、それか」
「だって私よりあなたの方がずっと頭がいいでしょ」
だからだというのです。
「お願いするわね」
「ああ、わかったわかった」
バウンサーさんはフロプシーさんの言葉に少し嫌そうに返しました。
「それじゃあ御飯の後でな」
「そういうことでね」
「気が休まる時間がないな」
「さっきまでくつろいでいたでしょ」
「仕事から帰ってだぞ」
「それでもあったじゃない、私なんてね」
フロプシーさんが言うには。
「家事ばかりで全然時間がないから」
「本当にか?」
「ええ、そうよ」
その通りだというのです。
「主婦は大変なのよ」
「それいつも言うな」
「本当のことだから。じゃあ御飯の後でね」
「わかってるよ、じゃあね」
こう言ってなのでした、そして。
煙草を吸いながらでした、また安楽椅子に座ってです。
ぷかぷかと煙草を吸うのでした、奥さんはそのご主人にまたでした。
「ああ、明日ね」
「今度は何だ?」
「お仕事の帰りに胡椒買って来てね」
「またなくなってきたのか」
「ええ、だからいいわね」
「わかったわかった」
バウンサーさんはもういいという素振りで奥さんに返します、そうしてでした。
今はまた安楽椅子に座って煙草を楽しむのでした、それがバウンサーさんのかけがえのない一時であるからこそ。
バウンサーさんのお話 完
2014・7・15
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