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【SAO】シンガーソング・オンライン
外伝:それが自分だから
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「……はぁ。最近の若い奴等はどんな教育受けてるんだ?」

公園の鏡を見ながら、腫れ上がった自分の頬に先ほど買った冷たい缶ジュースを当てて冷やす。後で湿布を張っておいた方が良さそうだ。
俺は自分が顔を腫らせる理由になった先ほどの出来事を思い出して、滝壺の底より深いため息をついた。

その日、俺はリアルの方でいつもの固定客を前に路上ライブをしていた。
学校帰りの暇な時間にやる路上ライブはうっぷん晴らしの部分もあって日課になっている。
しかし、今日は途中から招かれざる客が湧いて出てきたのだ。恐らくは高校生ほどの不良集団だ。
突然集団で公園に現れたそいつらはマナーも何もお構いなしに演奏中の俺と客のいた場所に寄ってきて、そのうちの女の子を執拗にナンパし始めたのだ。

演奏の気が散るものだからぶん殴ってやろうかと思うほどに鬱陶しかったが、客は恐らくその倍は鬱陶しく感じたのだろう。
余りにもしつこく言い寄ってくる男達にガマンの限界を迎えた女の子が不良の顔面をビンタ。
それに怒った不良集団VSそんな彼らの数倍の殺気を放つ元SAO攻略組軍団の喧嘩が勃発したのだ。

一時はどうなるかと思ったが、SAOという空前絶後の人殺しゲームを乗り越えた客たちは既に一種の戦士と化していたため決着は速かった。たかが数と若さに任せているだけの一般人が戦士に勝てる筈もなく、不良は僅か数分で追い返されて一件落着という訳だ。
どさまぎで俺も喧嘩に巻き込まれて頬にきつい一発を受けてしまった。
流石にこの理不尽にはカチンときたので相手を殴り返して昏倒させてやったが。
SAOでは全く戦えない身ではあったが、現実世界で喧嘩する程度の体力と筋力はある。
特別に強いわけではないが、素手の殴り合いなら戦えない事はなかった。

しかし、公園内で乱闘をしたとなれば他の誰かに目撃されて公園を追い出されることになりかねない。正当防衛の部分があったとはいえ暴力は暴力。暫くこの公園での路上ライブは中止するしかなさそうだ。
一先ずそのことを客たちに伝えたのちに俺達は解散し、今はこうして憂鬱のため息を吐き出している訳だ。

何が一番憂鬱か。
それは、あの不良達が俺の歌に全く興味を持たなかったこと……ではなく。
歌ではなく暴力で彼らの足を止めてしまったこと……ともまた違う。
まして、ここでしばらく路上ライブが出来なくなることでもない。
そう、答えは――すごく不思議そうな顔で言われたある一言。

「なんで不良が撃退できるのにモンスターは倒せないんですかって……そんなこと俺が一番聞きたいよ」

一番傷ついたのは、ファンからの心ない言葉だった。
ちくしょう、フルダイブ型ゲームなんて大嫌いだ。



 = =



SAOの22層といえば湖を囲うのどかな森
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