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逆説ロミオとジュリエット
5部分:第五章

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第五章

「よし、わかった」
「まずはここからお下がりを」
「そしてこの屋敷から出ましょう」
「すぐに」
 そしてであった。バルコニーでもだ。
「ジュリエット、そこか」
「お兄様!?」
 そのロベルドがだ。彼のところに来たのである。
「探したぞ」
「どうかされたのですか?」
「モンテッキィ家の跡継ぎがここにいるらしい」
「この舞踏会にですか」
「そうだ、来ているそうだ」
 狼狽した顔での言葉だった。
「ここにいては危ない」
「それでは一体」
「私が守るからな。ここから去ろう」
「ここからですか」
「そうだ、すぐにだ」
 こうジュリエットに話すのである。
「それでいいな」
「わかりました」
「カプレーティ家の娘は私が守る」
「何っ!?」 
 今度はだ。ロミオが聞いたのであった。
「今何と」
「行くぞ」
  ロベルドはバルコニーの下には気付かずにだ。ジュリエットに告げる。
「今すぐここから消えよう」
「わかりました」
「ではロミオ様」
「こちらへ」
 モンテッキィ家の者達もここでロミオに言う。
「どうかこちらへ」
「早く」
「うん、じゃあ」
 こうしてであった。二人は別れ別れになった。しかしである。二人はお互いのことを知ってしまったのだった。だがそれでもだった。
 ロミオは己の家の屋敷にいた。その豪奢な広間を歩き回りながらだ。ロレンツォに対して話した。
「いいかな」
「何でしょうか」
「君はこの前僕に言ったね」
 こう前置きしてからの言葉だ。
「そろそろ結婚を考えるべきだと」
「はい、確かに言いました」
「そうだね。それだと」
「相手は見つかったのですか?」
「素晴しい人に出会えた」
 歩き回るのをここで止めた。
「その人に」
「それはいい。ただ」
「ただ?」
「カプレーティ家の娘だけは駄目ですが」
 ロレンツォはこう言ってきたのであった。
「あの家の娘だけはです」
「えっ、それは何故なんだい!?」
「何故も何も理由ははっきりしているではありませんか」
 こう返すロレンツォだった。
「あの家は我がモンテッキィ家にとって仇敵ですね」
「それは僕も知っているが」
「それならおわかりですね」
 また言うロレンツォだった。
「あの家の娘とはです」
「そうだね。それじゃあ」
「あの家以外にもいい家は多くありますし娘もです」
「星の数だけいる?」
「ええ、います」
 ロレンツォは若い主に静かに告げる。
「ですから」
「それはそうだが。だが」
「だが?」
「いや、いい」
 ロミオは言葉を途中で止めた。

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