第七十話
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を浮かべていた。
「アンドリュー・ギルバート・ミルズさん。お話は桐ヶ谷君から聞いています。私、SAO対策本部の菊岡です」
「は、はあ……」
エギルは困惑しながらも差し出された名刺を受け取ると、胡乱げな表情で名刺とキリトの顔を交互に見つめていた。キリトは本当だ、と言わんばかりにコクリと頷くと、エギルは名刺をポケットにしまいつつ言った。
「積もる話もあるでしょうが……まずは席に座って注文でもどうぞ。ほら、ショウキにリズも」
「……ごめんエギル、ちょっと店の奥借りる」
店内に入ってから沈黙を保ち続けた里香がそう言葉を発したかと思えば、エギルの「お、おう……」という了承の言葉とともに、ツカツカと足音をたてて里香は店の奥に引っ込んでいく。取り残された男性陣はポカンとしながら、全員ほぼ同時に俺の顔を見てきた。
「何したんだ、ショウキ」
「ショウキ、まず謝ってこい」
「やっぱり一条くんが何かしたのかい?」
「…………違う」
そこまで一斉に濡れ衣を着せられると、むしろ俺が何かしたのかという錯覚に襲われ、少しばかり思索に耽ってしまったがそんなことはない。濡れ衣は濡れ衣である。というか他の二人はともかく、さっきまで同じ苦痛を体感していた筈の菊岡さんは完全に悪ノリでしかない。
「実は……」
と、前置きは簡単に病院で起きたことを手短に話す。もちろん、病室で会った須郷のことだ。――キリトの前で言うには酷な話だが、須郷のあの口振りからして、もうキリトとは接触済みであろう。キリトは一日たりとも欠かさずアスナの見舞いに行っているのだから、須郷との接触がないと考える方がおかしい。
「…………」
案の定キリトの表情に暗い影が落ちる。エギルもチラリとキリトの方へ目線を向けていて、何か言葉をかけてやろうとしたその時――
「な、ん、な、のよアイツはっ!」
――という空気を震わす怒声が店の奥から響き渡り、その直後に何かが盛大に破壊される音がしたのだった。
「……ごめん」
――怒声と破壊音がしてから数分後、俺たちはテーブル席に落ち着き、里香のしょんぼりとした謝罪を聞いていた。机の上にはそれぞれの飲み物と、里香の前には大破したメジャーが置いてある。……要するに、先程の怒声は里香の盛大な八つ当たりだ。
店の奥で大声を出し、俺が無理やり連れ出したせいで持ってきたままだったメジャーをぶち壊し、里香は空気を悪くしたことを詫びるぐらいには冷静に――
「あ゛あ゛あ゛思い出してもムカつくアイツ!」
――なったかは不明だが。物に当たってしまうほどイラついていた里香に対し、触れないようにしたのは正解だったようだ。……まあそれはともかく、これでようやくALOやSAO未帰還者
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