第七十話
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引き受けたとして、俺たちプレイヤーには間接的に命の恩人とも言える。
目の前にいる青年がその責任者だと、するならば――
「おっと、気づいたようだね。流石は英雄だよ……フフッ」
――俺たちの命を繋ぎ留めていたのは……いや、最低でも今もまだ目覚めない明日奈の命を繋ぎ留めているのは、俺たちを鼻でせせら笑っているこの青年だということになる。
「分かったかい? わざわざ高い金を払って生かしてやってるんだ、これくらいは報酬として貰っても構わないだろう?」
「このっ!」
「……抑えろ、リズっ……!」
遂に殴りかかろうてした里香を何とか止める。今、こちらが彼に何をしようと、それは結果的には彼を喜ばせるだけに過ぎない。もちろん里香もそれは分かっているのだろう、取り押さえようとする俺に対して、すぐに抵抗を止める。
「リズ……ああ、君が向こうで明日奈の親友だったという。明日奈に代わって礼を言うよ。ありがとう」
許されるなら今すぐにでも殴りかかる――そんな俺たちの様子が堪らなく面白そうに、哄笑が溢れてしまわないように口の端を吊り上げながら、結城伸之はそう言いながら何かをポケットから取り出すと、こちらに向かって投げてきた。投げた、といってもキャッチボールのように緩やかであり、受け取るのは容易だったが。
「メジャー……?」
「ああ、君じゃないよ翔希くん。そっちの彼女に渡してくれ」
渡された――投げられたのは計測用のメジャー。反射的に俺がキャッチしてしまったが、どうやら里香に渡したかったらしい。何の用か警戒して里香に渡したくはなかったが、里香本人が俺の手からそのメジャーを引ったくると、挑戦的に彼の方を睨みつける。
「……何よ」
「僕が今日来たのは、お見舞いの他にも用事があってね。僕と明日奈の結婚式に使う、ドレスのサイズを測りにきたんだよ」
やはり一生に一度のことだ、大事にやらないとね――などと結城伸之はうそぶく。そのために計測用のメジャーを持ってきたのだろうが、それをどうして里香へと渡すのか。
「なに、親友である君が測ってくれれば、明日奈も喜ぶだろう……ああ、君がもしも嫌だって言うなら、夫である僕が測る訳しかないだけど……」
「――ッ!」
里香の息を呑む音が、隣の俺にも聞こえてくるようだった。要するに彼はこう言っているのだ――彼と明日奈の結婚式をいかなる形であれ協力するか、親友の身体を彼へと預けるか、どちらかを自分の手で選択しろ、と。もちろん選べるわけがない。その理不尽な選択に、里香を抑えていた俺が彼に殴りかからんとした時、静かにドアが開いた。
「結城さんの定期検診に――」
「――それでは『須郷さん』、また」
定期検診に来た看護士の方が来た隙に、怒りで身体を震
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