第七十話
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ざ俺が直葉のことを口出しするのもおかしな話だ。
「んじゃ、今日はこれでお開きだ。ショウキとリズも帰んな」
キリトの帰り支度と店主からの退去勧告をもって、今回の話し合いを終える。話し合いと言いつつ何が決まった訳でもないが……
「あ、キリトー。アスナの病室にアイツ宛てにこれ置いといて」
「……壊れたメジャーとかアスナの病室に置きたくないから勘弁してください」
大破したメジャーの受け取りを拒否しつつ、キリトは先に《ダイシー・カフェ》の店内から出て行く。その間に俺はエギルに代金を払っていると、里香はそのまま前衛芸術となったメジャーをゴミ箱に投げ入れた。すまないメジャー、君に罪はないがタイミングが不味かった。
「……菊岡さんは帰らないんで?」
「ああ、僕はまだここでサボってるよ。前に停まってる車の運転手に頼めば、最寄り駅までは送ってくれるから先に帰ってて」
そう言って菊岡さんだけ新たに飲み物を追加注文する。あまり詳しくはないものの、その飲み物にはアルコールが入っていた気がするが。……サボってるなどと言いつつ何をする気かは知らないが、さて、菊岡さんの今日の『奇遇』な用事とは何だったのか。……などと考えながら、俺と里香は《ダイシー・カフェ》を後にした。
……来る時と同じく菊岡さんの厚意に甘えることにして、俺と里香は最寄り駅まで高級車で送ってもらい、病院に行く時に集合した地点に戻って来た。後は電車で家まで帰って、昼飯を食べたらちょうどALOのメンテナンスが終わる頃か、と電車待ちをしながら考える。
「……ねぇ翔希。あたし、アスナをあんな目に合わせてる奴がいたら、絶対にそいつのこと許せない」
「……ああ」
電車のホームにある椅子に座りながら、里香が言った言葉に小さく同意する。もう随分冬が深まって来ており、風が良く通る駅のホームという場所はそれなりに肌寒い。
「それこそぶん殴ってやらないと気が済まない! ……けどね。あたし、弱いからさ」
あんたがあたしの分まで、そいつをぶん殴ってよね――という物騒な言葉とともに、俺が待っていた電車が駅のホームに到着する。
「任せろよ。じゃ……またな、リズ」
「里、香!」
ついつい向こう側での名前を口にしてしまいつつも、俺は目当ての電車に乗り、里香が元気良く訂正の言葉を言った瞬間に電車のドアが閉まる。タイミングが良いんだか悪いんだか、と苦笑しながら、電車は発車していった。
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