暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第七十話
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見舞いだった。

 里香と――いや、リズとアスナはあの浮遊城において親友だった。キリトとアスナの結婚を一番喜んでいたのも彼女だったし、アスナも攻略の合間に良くリズの店に顔を出していた。そして今も、親友を助ける為に彼女はALOに入っている。……決して目覚めないとは分かっていても、アスナの見舞いに行きたがっていた。

 受付で簡単に手続きを済まし、アスナの病室がある階までエレベーターで移動する。……意識不明の親友の見舞いに行く、というシチュエーションでは仕方のない事だが、里香の横顔はいつもでは考えられないほど暗い。何か気の利いた一言でも言ってあげられれば良いが、俺がどう言うか困っている矢先に、里香が先に口を開いた。

「その……ごめん、ね。何か暗くて。あたしらしく、ないよね……」

「いつも元気すぎるからな……良いんじゃないか、たまには」

 無理して明るく努めようとしている里香に、それとなく『無理するな』と伝えるとともに、エレベーターが電子音とともに目的の階に止まったことを知らせた。迷子になりそうなほど広い入院棟に足を踏み入れると、俺はキリトに聞いた病室へと歩を進めていく。この階層は個室の入院患者ばかりで、音という音は、忙しなく働いている看護士の方たち以外は全くの無音で、かえって不安を煽っているかのようだった。

「……ここか」

 入院患者の名前に『結城明日奈』と書いてあることを確認し、一呼吸置いてから病室のドアを開ける。広々とした部屋に色とりどりの花が飾られており、一見すると祝い事の席のように感じられる。……もちろん、事態と場所はその逆なのだが。

 病室の中には人の気配はまるでない。――人の気配が無いはずが無いのに。ピ、ピ、という無機質な音声を響かせ、入院患者がいるだろうベットのカーテンは閉ざされている。……いや、良く見るとカーテンの隙間から栗色の髪の毛が……?

「――アスナ!」

 いてもたってもいられなくなった里香が、俺を押しのけて病室へと突入する。そして栗色の髪の毛が覗く、ベットのカーテンを静かに引き、カーテンで仕切られていた向こう側が露わになる。

 ……そこには、やはり。かつての自分たちと同じように、最新の介護型ベットに――身体中に繋がれたコードは、まるで拘束具のようだ――アスナが横たわっていた。その顔にはまだ、悪魔の機械《ナーヴギア》が装着されたままで。

「アスナ……」

 里香の沈んだ声と、俺が病室のドアを閉める音が、タイミング良く重なった。

 物言わぬアスナ――明日奈に俺とリズも言葉を失ってしまう。幸いにも、看護士の方々かご家族の方々の介護は充分に行き届いているようで安心したが、俯く里香とナーヴギアに囚われたままの明日奈を見ると、自然と腕に力が込められる。何処にもぶつけることの出来ない怒りが
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