暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋は身近なところにいるという皮肉をケンジは知らない
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り恐ろしいと言われているが、まさにその通りだった。目の前で憤怒の形相を浮かべている美女を見てケンジは背筋を棘で貫かれたような錯覚に陥る。
「……今アンタ、何て言った?」
「えっと、別に何も」
「早く言わないと殺すわよ……?」
「ひいいい……」
あれ僕って殺し屋なんじゃ、と自分を奮い立たせる事すら出来ずに、ケンジはクルッと半回転して校門へと走り出した。あまりに突然だった相手の行動に女子はポカンと口を開けていたが、
「逃げるなんて卑怯じゃないのよこの弱虫ヤロォォオォオオオ!」
美人らしかぬ激語を校舎に残し、スカートの裾が乱れるのも惜しまずに彼女はケンジを追いかける。
そんな男女のやり取りを見ていた女子テニス部の2年生でケンジと同じクラスの二人は、ごく自然な流れで言葉を口に出した。
「いやー、暁君やるねぇ。あの玉木先輩を挑発するだなんて」
「普段大人しそうだからそういうタイプだとは考えてなかったよ。けどさ、お尻ブヨブヨって……」
彼女達の会話も空気と一体になって消えていき、その場に放課後の平穏が帰ってくる。
二人の殺し屋が互いの正体に気付くのは、もう少し先の話。
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