暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋は身近なところにいるという皮肉をケンジは知らない
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があってさ」

 「気になること?」

 訝しげな表情で復唱するケンジを前に、要は顔付きを変えぬまま言った。

 「君、最近夜出かけたりしてない?」

 「え?ああ、うん。出かけてるよ」

 戸惑いながらも即答した温和な少年に、要は逆に拍子抜けしてしまった。

 ――え、そんな簡単に肯定出来るか?あー、やっぱり俺の勘違いじゃ……。

 要がケンジを呼び出した理由。それは自身の中に深まる謎を解明するためだった。

 ホテル『ニューグランド』、そして山下埠頭。殺し屋統括情報局との激突の最中に垣間見えた、暁ケンジらしき人物。心中では絶対違うと唱えておきながら、どうしても完全に打ちのめせない。

 最初は『アイツ』に聞こうかと迷った。最近入った新人で片手撃ちするキレ者。殺し屋統括情報局の人間である『アイツ』ならすぐ解答を教えてくれるだろう。だが殺し屋に堅気である人間の名前を口にするのは気が引けた。『アイツ』の正体を知っているだけに、下手したら面白がって殺しかねない。どこも八方塞がりだと悟った彼は、実際に本人と話すしかないと決断し、今に至る。

 ――勘違いならそれでいい。敵が同じクラスにいるなんて、集中して勉強なんて出来やしない。

 鉄仮面の裏でそう思いながら、要はもう一押し必要だと一気に踏み込んだ質問をする。

 「数日ぐらい前暁に似たような人を見かけたもんだからさ、一体何してるのかなと思って」

 そう言っていきなり過ぎたかと少し反省する。さすがに怪しまれるかと思った要だが、返ってきた言葉は意外なものだった。

 「ああ、それはバイトだよ。僕の母さん放任主義だから、夜にバイトしていいかって聞いたら普通に承諾してくれたんだ。田村君も働きたい時は言ってよ。僕から店長に話通せるし」

 「え?あー、ありがとう。でも親はバイト禁止だって言っててやらせてくれないんでね。今は学業にでも精を出すよ」

 「え、バイト出来ないの?でもその分何でも出来るんだもんなあ、田村君は凄いね」

 純粋に賞賛の目を向けてくるケンジに、要は愛想笑いを浮かべながら結論を弾き出した。

 ――こんな普通な奴が殺し屋なわけないな。『アイツ』に聞かなくて正解だった。

 ――……。

 ――何だ?この感覚。

 要は自身の心に湧く何かを感じ取って心中で首を傾げた。どこか懐かしさがあり、そして嬉しくも思えてしまう曖昧な感情。だが今は気にする必要はないと、彼はそれを意識の中から放り出した。

 やがて授業開始二分前になり、要はケンジと一緒に図書館を出て教室へと足を向けた。次の授業である物理基礎の教材はすでに用意してある。一方で何の用意もしておらず慌ただしく動くケンジを見て、思わず笑みを浮かべてしまう。それは彼に対す
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