暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋は身近なところにいるという皮肉をケンジは知らない
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ンジは次の準備をしてから机に突っ伏して寝ようと考え、すぐに行動に移そうとしたのだが――

 「……暁」

 「え?」

 突然後ろから自分の名を呼ばれ、それに身体を半身にさせて答える。そして相手の顔を見て、ケンジは驚きと困惑を隠せなくなった。

 何故なら、その人物はクラス編成して一度も喋った事の無い相手だったのだから。

 「田村君、だよね?」

 自分の記憶が間違っていないか恐る恐る尋ねると、相手――田村要はズボンのポケットに手を突っ込みながら頷いた。

 「そう。で、ちょっと話したい事あるんだけど、今いいか?」

 ――話したいこと?僕なんかやらかしたかな?

 田村要はクラスの優等生であり、クールな性格と端正な顔立ちが女子に人気な完璧男子だ。けれど自分から誰かに話しかけたり、他人と仲睦まじく会話している場面はほとんど見た事が無い。常に無表情で何を考えているのかも分からず、男子からはあまり良く思われていなかったりする。

 ――まあ、僕もそんなに大差ないだろうけど。確実に違うのは能力の差だね。

 とりあえず何か言葉を返さないといけない。周りも普段口数の少ない二人の生徒が邂逅したという事で、密かに視線を向けていて少し居づらい。ケンジは断る理由も無いかと足早に答えを出した。

 「いいよ。でもここは人が多いから、外に出ない?」

 「そうだな」

 二人は簡単に話を済ませて教室を出て行く。後に残されたのは女子の何かを期待するような黄色い声だけだった。

*****

図書館

 山垣学園は他校に比べてまだ新設校で、設備は申し分無い清潔さと綺麗さを保ち続けている。これが偏差値の低い高校で不良が溜まっていたとしたら一か月後には教室の窓やら扉が破損していた事だろう。幸い山垣学園は数年で偏差値を上昇させ、入学してくる生徒も真面目な人種が多い事から、今日も平和な学園生活を体現させていた。

 大学のキャンパスさながらの第一校舎に入る図書館は4階にあり、街を見渡せる大きな窓を持つ勉強スペースは放課後になると生徒で埋め尽くされる。

 3時限目を終えたばかりで図書館に生徒の姿は見えない。普通の高校の倍近くはあるだろう本棚は同じ角度と同じ通路を形成し、整然と並んでいる。ゴシップ記事や一般小説、果てには理系の専門書籍まで豊富なジャンルを兼ね揃えており、進学校だからこその力をまざまざと見せつけられた。

 「じゃ、そこ座るか」

 要はそう言って後ろを歩くケンジを促した。勉強スペースとして生徒達に重宝される場所。今は誰もおらず、二人の生徒だけがこの場を支配していた。横浜市街のパノラマが広がる圧倒的スケールを横目に、要が会話を切り開いた。

 「いきなり呼び出してゴメン。ただ一つ気になる事
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