暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
少しずつ浮き上がって来た裏の事情を赤島は推測する
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潰すことか、組織を内側から引き裂くことか……」
「なら、私達はこの先どうすればいいの?」
宮条が何気ない風に先輩へと疑問を投げかけた。無精髭を生やした中年の殺し屋は二ヘラと笑ってみせる。
「もちろんやり返すよ。敵が外部だろうが内部だろうがね」
やがて宮条が「ここで」と言って別れた。彼女は日中の間だけ建築関係でバイトをしているらしい。殺し屋の仕事は意外と報酬が高いのだが、それでも普段働いているとなると、彼女はまだ表の世界で生きていける人間なのだろう。それが赤島には少しだけ羨ましかった。
赤島は一人歩きながら、宮条には言わなかった可能性を心中で唱えた。
――俺はアイツが黒幕だとも考えているんだけどな……それはさすがに安直すぎるか。
脳裏に浮かぶのは、八幡や狩屋に続く美青年であるチームCのリーダー。細い輪郭と柔和な笑みは女性の心を射るには十分な威力を誇るだろう。けれど彼が殺し屋の一人である事を忘れてはいけない。
大河内降矢。判断力にも優れ、今回の作戦を一番最初に促した人物。あのとき彼の考えに赤島は反対したのだが、彼の具体的な説明を聞いて納得せざるを得なくなったのは記憶に新しい。
その他にも彼に関する疑問は個人的にいろいろ感じる部分があった。別に妬んでいるわけではない。ただ大河内の完璧すぎる行動に逆に気になっていたのだ。
「……何か気になったら阿久津さんにでも聞いてみるか」
誰にも聞こえない声でそう言って、赤島は陽射しを背に浴びながら街の中へと溶け込んでいった。
しかし、彼は知らない。
昨日の戦闘が終わった直後に、自分達が所属する組織の中枢が何者かにクラッキングされたという事を。彼らが所有する膨大なネットワークが全て敵の手に落ちたという事実を。副局長の阿久津が今、失意と諦念のどん底に沈んでしまっている事すら、彼は知らない。
敵の内情も真意も正体も分からぬまま――
街の裏側で餌を求め続けるだけの小汚い鼠共による無駄な争いが始まる。
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