暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
少しずつ浮き上がって来た裏の事情を赤島は推測する
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闘開始直後に殺し始めた人間はみんな、動きが鈍かった気がする」

 ――やっぱりな。

 赤島は心中でそう呟き、自分の推測が正しかったと実感する。だがその推測は自分達にとっては劣悪な内容であり、彼の顔色はあまり優れない。

 「もしも、の話をするぞ」

 そう前置きをして、赤島は度々背中を擦る仕草をする宮条に自身の考えを述べた。

 「裂綿隊は防弾チョッキを着用していた。恐らく、裏でヤクザから卸された試作品か何かだろう。じゃあどうして奴らは、こんな良いタイミングに防弾チョッキを着けていたんだ?仮にチョッキをヤクザから貰ったとして、それを仕事になったら毎回着るか?いや、普通は着ない。俺達もアイツらも同じ穴のムジナだ、自分の事なんてそれほど大事にしていない」

 殺し屋というのは非常に危険な連中であるのと同時に、命を軽々しく扱う人間失格な連中である。それは自分に対しても同じで、赤島も宮条も、自分が死ぬ時は自業自得だと完全に割り切っていた。人を殺すという道理に外れた行為をどう感じているかは人それぞれだが、二人は『これまで人を殺め続けてきた事に対する当然の報い』として受け入れていた。

 相手に同じ気持ちが備わっているとは思っていない。だが根本的なところは似ているだろう。『死ぬなら死ぬ。死なないなら仕事をするまでだ』。そんな非道な倫理が、
彼らを闇に落とし続けているのかもしれない。
 だからこそ、わざわざ防弾チョッキに頼ってまで自分の命を守るという行動は同業者として一笑に付せるものだった。

「でも、奴らは着てたわよ。本当ならもっと早く戦闘は終わっていた筈だった」

 「ああ。撃たれた奴が『ちゃんと死んでいたら』、もっと早く終わっていたし、俺もお前も怪我せずに済んだかもしれない」

 「……それって」

 「そう。『撃たれる事を予期していた奴らだけが』防弾チョッキを着ていたんだ。お前の感覚を信じれば、最初に殺した奴らはチョッキを着ていた筈だぜ。あれは元々軍用の武装だし、それなりに重量がある。いくら殺し屋でも、慣れないものは慣れない。だから動きがチョッキを着ていない奴よりとろかったんだよ。そして、この防弾チョッキは同時に時間稼ぎの役も担っていた。お前が望んでいた『もっと早く戦闘を終わらせる』のを妨げるために」

 「……赤島さんって、意外と頭良かったりする?」

 「いやいや、だから長年の勘だって。それにこれは仮説だぜ、合っているとは限らないさ」

 とはいえ、この仮説が実証されてしまって困るのは赤島達だ。時間稼ぎ然り防弾チョッキ然り、誰かが組織に介入している蓋然性は確実となってしまう。赤島は深い吐息を吐きながら淡々と言葉を吐き出した。

 「俺達が知らないところで、誰かが糸を引いてる。そいつの目的は俺らを
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