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横浜事変-the mixing black&white-
少しずつ浮き上がって来た裏の事情を赤島は推測する
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 阿久津は今回の作戦が意味する本当の目的を、口に出して呟いてみた。

 「……殺し屋統括情報局本部のクラッキング。これによって敵は我々から情報を奪い、行動不能にする。そして自分達が『殺し屋統括情報局本部に成り切って』、殺し屋チームを意のままに操る」

 重々しい言葉を吐き出す彼に数分前まで電子戦に臨んでいた一人が質問する形で問うた。

 「ヤツは、何故我々に刃向かったのでしょう?」

 「……そんなもの、本人に聞け」

 ぶっきらぼうにそう返し、改めて自分の内にその疑問をぶつける。

 ――奴は殺し屋チームで安定した位置にいる筈だ。それなのにどこに不満がある?この街の殺し屋を片っ端から集めて、最終的にロシアの殺し屋達まで絡ませた奴の意図は何だ?

 考えてみても、その答えははっきりした形を持たない。まるで黒幕の人間性そのものを表しているように。

 阿久津は胸ポケットから動かなくなった携帯を取り出し、それを見つめ、これまでで一番弱弱しい声で誰にも聞こえないボリュームで呟いた。

 「……局長、すみません」

 こうして横浜の裏に蠢く巨大な組織の根端は、ゆっくりと舞台から引き剥がされていった。

 阿久津は黒幕の顔を思い浮かべて、憎々しげに呟いた。

 「まるで、苦手な食べ物を先に食べていく子供だな。さしずめ、私達は奴から見ても面倒な存在らしい」

*****

次の日 午前 横浜某所

 赤島は行きつけの闇医者宅を出てのんびりと街並みを楽しみながら歩いていた。右手は包帯で固定されており、闇医者からは『しばらく人殺せないね。残念残念』とにこやかな顔で言われた。別に人を殺す事が楽しいわけではないが、否定するのも億劫だった。

 日光に照らされて歩く自体、久しぶりな気がした。嗅覚が穏やかな晴れの匂いを感じ取り、何故か心地良い気持ちになる。そして自分らしくないなと感じ、一人苦笑する。

 ――俺は脇役メインだってのに、いつの間にこんな格上になっちまったんだか。おかげで心まで晴れ晴れしくなっちまったじゃんかよ。

 麻酔で痛覚は感じないとはいえ、僅かに血が滲んでいる右手は自分で見ていて痛々しくなる。すれ違う何人かは自分の手に目を向け、そそくさと足早に過ぎていく。恐らくヤクザか何かと間違えているのだろう。

 ――いや、ヤクザよりも始末悪いか、俺。

 そんな事を考えていると、信号の先に知人がいるのを見つけ、左腕を上げて呼んでみた。すると宮条は少し背中を擦りながらゆっくり右手を上げて返してきた。

 信号を渡り、彼女と合流したところで開口一番に告げる。

 「よぉ、怪我人」

 「そんな見え見えで怪我人だって分かる奴には言われたくないわね」

 呆れ顔でそう呟く長髪の
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